コムデギャルソン21~22年秋冬コレクション モノクロで描く迫力の造形

2021/03/24 06:30 更新


 コムデギャルソンは東京本社で、「コムデギャルソン」と「ノワール・ケイ・ニノミヤ」のフィジカル(リアル)のファッションショーを行った。デジタル開催となったパリ・コレクションでは発表せず、独自のスケジュールでフィジカルにこだわって21~22年秋冬コレクションを見せた。

(小笠原拓郎)

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 スモークがたかれた幻想的な空間に、たっぷりとした量感の黒と白のスタイルが現れる。コムデギャルソンは、モノクロの布の造形で描く迫力のラインを揃えた。アブストラクトなボリュームのケープにクラシックなシルクハット、マスキュリンなテーラードとフェミニンな曲線が混じり合いながら抽象のフォルムを生み出す。ベールのように頭を覆うテーラードジャケットは、そのままドレスへとつながる。マスキュリンな黒いテーラードコートはフロント・トゥー・バック。そこにイノセントな白いフリルのドレスが重なり、違うアイテムへと変わる。クリノリンディテールのブラックドレスは、そのディテールとは裏腹にグラフィカルな雰囲気で、どこか未来的な空気を漂わせる。黒いジャケットの中からこぼれるように膨らみ落ちる白い布、その布のうねりが不思議なパワーを宿す。束ねられたチュールの布が巻きつきながら立体的なドレスへと変わり、迫力をもって押し寄せる。おそらくデジタル映像では伝わらないであろう、布の動きと抽象のフォルムが放つパワーがフィジカルのショーゆえに伝わってくる。それは、常に新しい美しさを模索する川久保玲のモノクロの世界。テーマは「ランドスケープ・オブ・シャドウ」。「カラーの氾濫(はんらん)、音の洪水、情報の過多、渦巻く全てのもの。それらから離れてモノクロームの静寂の中での一呼吸」と川久保。

コムデギャルソン
コムデギャルソン
コムデギャルソン

 ノワール・ケイ・ニノミヤのショー会場には一輪挿しのユリが並んでいる。暗転した空間に登場するのは、得意のハンドクラフトの装飾ドレス。しかもギラリと輝くメタリックなパーツの装飾だ。コクーンドレスやライダーズジャケットを針のようなメタリックピースが覆う。痛々しくとがる装飾とクラシカルなドレスがコントラストを描く。とげのあるメタルとフィルム糸のような透け感、柔らかな透け感とレザーの質感、相反する要素がハーモニーを奏でる。ファスナーの金属がうねるようにフリルを描き、ケーブルニットやドレスを彩る。メタリックテープを編み込んだドレスやビジューで描く造形ジャケットは重厚なムード。人工的なメタリックの装飾にもかかわらず、どこか生命の持つ生々しい力にあふれている。それは金属パーツといえども、クチュールのように人の手で生み出すからかもしれない。まさに、ノワール・ケイ・ニノミヤらしさに貫かれたコレクション。

ノワール・ケイ・ニノミヤ
ノワール・ケイ・ニノミヤ
ノワール・ケイ・ニノミヤ


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