小さいけれど大きなこだわり、ボタン新作

2016/10/19 03:07 更新


 ボタンメーカーの商品開発が相次いでいる。ファッション性や機能性を向上したほか、自然環境への負荷を低減した新商品を出しており、国内外への販売に乗り出す。海外メーカーとは正面からコストを競えないが、強みとする開発力に磨きをかけ、付加価値を追求している。

 カナセ工業は、遠心成形法によるアクリル樹脂ボタンを新たに開発した。アクリル特有の優れた透明性、耐候性を損なわずに、耐熱性と耐薬品性を大幅に高めた。石油系のドライクリーニングにも対応し、ポリエステル樹脂と同じ方法で染色が可能だ。通常のポリエステル製と比べて黄変しにくく、耐衝撃性や耐圧縮性に優れる。パールタイプと蛍光タイプ、それらの混合タイプの3種類を開発、来年1月から本格的に販売する。

 大阪プラスチック工業は、ポリエステル樹脂と耐衝撃性に優れるABS樹脂を組み合わせたコンビネーションボタンを開発した。光沢による上質感が特徴で、レディスのアウターを中心にユニフォーム用途まで狙う。そのほか、パール調に輝く「パールビーズ」ボタンも開発。ユリア樹脂を原料に5、6回の塗装を重ねて軽さ、光沢感、重厚感を表現した。アクセサリーにも応用できる。いずれも新たな見本帳を作り販売を始めた。

大阪プラスチック工業・パールビーズ
大阪プラスチック工業・パールビーズ

 

 自然環境に配慮したバイオマス(生物資源)ボタンが続々と登場している。アイリスは2種類のバイオマスプラスチックで、それぞれ新商品を開発した。一つはトウゴマから搾り出したヒマシ油を石油の代替に使って生成したバイオナイロンプラスチックのボタン。ボタンの成分に占めるバイオマス比率を95%まで高めることに成功した。

 もう一つはサトウキビの搾りかす(バガス)から精製したエタノールを基に作ったバイオポリエチレンプラスチックのボタン。バイオマス比率の上限は94・5%。いずれも成分の残り5%程度は耐熱剤や顔料など必要な加工剤のため、バイオマス比率はほぼ最高値を実現した。

 ルックウェルは間伐材やトウモロコシ、サトウキビの剪定(せんてい)枝などと、不飽和ポリエステル樹脂を混入した原材料を使ったバイオマスボタンを開発した。焼却時に二酸化炭素が約2割削減できるという。物性、品質、コストは従来品とほぼ同じ。カラーも同様に約230色に対応する。当面はシャツ用途から販売を進める。

 

ルックウェル・バイオマスボタンカラー  カラー対応も可能なバイオマスボタン
ルックウェル・バイオマスボタンカラー カラー対応も可能なバイオマスボタン

 

 日東ボタン(東京)は、ユリア樹脂の原料の一部をバガスに変えた「バガスボタン」の販売を始めた。同社製従来品との比較では品質、性能、原価のいずれも同等。ユリア樹脂ボタンは同樹脂に充填(じゅうてん)材の木材パルプを使って製造するが、木材パルプの代替にバガスを使った。バガスの調達のしやすさもあり、従来品とほぼ同じ原価で製造でき、ユリア樹脂の特徴である耐熱性と強度を損なわないという。同社は今後、ユリア樹脂ボタンを順次バガスボタンに切り替える。ゆくゆくは、現在のカタログ商品の半数となる1万点以上をバガスボタンにする考えだ。

日東ボタン「バガスボタン」
日東ボタン「バガスボタン」


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