前回は私がアパレル産業に足を踏み入れるまでをお話ししましたが、今回はその後家族でもない人間が「家族経営の伝統産業・創立120年の会津木綿工場」を継承するに至るまで、一体なぜ「会津木綿にのめり込んだのか」の話です。
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ファンの提案で出合った素材
会津木綿との出合いは私が「ヤンマ産業」を立ち上げて2年目でした。そのころ当社は高齢者の方々との協働が某雑誌に特集記事で出たりして、ちょっとコアなファンができ始め、ファンの中の1人の方が「せっかく日本のおばあちゃんが縫ってくれているのなら日本の生地を使ったらどうですか? 私の地元に会津木綿という布があって、お土産品やとても高い婦人服とかにしかなっていなくて、ヤンマさんの服が会津木綿で出来ていたら最高なのに」と提案されたのでした。私、九州出身で会津木綿などその時初めて聞いたくらいで、会津若松ですら日本史の授業で聞いたことがあるなあという程度でした。
早速その方に案内いただいて、会津若松の工場見学へ。初めて見た会津木綿は「やっぱり和風だな」という印象。縞柄もなんだか鈍臭く、生地の厚みもやぼったい中厚地でちょっと扱いにくそうな印象だったのです。夏物でも冬物でもなさそうで、何に使われてきたのですか? と当時の原山織物工場の社長に聞くと「野良着」に使われてきたのだと。確かに、丈夫にしたいからといってあんまり厚いと乾きにくいし、薄くては野良仕事に耐えられない、だからこの中厚地。
一年中、出番がある生地
実際使ってみると、この厚みなのにとても乾きが速い! 会津は盆地気候で夏は猛暑、冬は極寒という厳しい気候のため、会津木綿はごわっとした質感にもかかわらず通気性が良く、冬は綿であるにもかかわらず保温力が高いと説明されました。ということは、一年中出番があるってこと? それはすごい! 皆様も経験があると思いますが、洋服は使わない間に傷む。夏にヘビロテしたTシャツが翌夏「もう着られないじゃん」というほど染みだらけだったり、なんだかみすぼらしくなったりしませんか? 年中使える会津木綿だとそれが起きないのです。
初めて出合った「和木綿」が「会津木綿」なわけですから、そこから「日本にはもっと他にもいろんな面白い木綿があるのかも!」と思い立つわけです。しかし、他の産地の綿織物は、なんとなく「さらっとして使いやすい」ところに落ち着いている感じ。いやまだ全然勉強足らずなので教えていただきたい。「ここにもこんな個性的な面白いものがある!」と! あああ、やっと「個性」が出てきたところで、次こそ「個性」と「ユニーク」について書きます!
(ヤンマ産業&会津木綿工場はらっぱ代表・山崎ナナ)
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