【ニューヨーク=杉本佳子通信員】ブルックスブラザーズ(ニューヨーク)は7月8日、デラウェア州の連邦破産裁判所にチャプターイレブン(米連邦破産法11条、日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。身売りを前提にしており、売却を効果的かつ円滑に進めるためにチャプターイレブンを申請したとしている。近いうちに競売にかけ、数カ月以内に売却取引を成立させたい考えだ。
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裁判所から承認を得られれば、当座の運転資金7500万ドルをブランド管理会社のWHPグローバルから調達する。北米に200の直営店を持つが、新型コロナウイルスの影響で現在臨時休業している店も含め、51店を閉める。マサチューセッツ州、ノースカロライナ州、ニューヨーク州にそれぞれある計三つの自社工場は、8月15日に稼働停止する。
同社は1818年に創立された、米国最古のアパレル企業。祖父、父、息子と3代にわたる愛好家が多く、アイビーファッションの代表的存在として知られる。二つの世界大戦にも耐えてきたが、昨年から「身売りするのではないか」という報道がたびたび出ていた。2001年以降はイタリア人実業家のクラウディオ・デル・ヴェッキオ氏が、オーナーCEO(最高経営責任者)としてかじ取りをしてきた。
不振の一番の要因は、ビジネスウェアのカジュアル化だろう。ブルックスブラザーズの真骨頂であるスーツは、近年のライフスタイルの中で出番が減った。カジュアル化に合わせてカジュアルウェアを増やしたり、トム・ブラウンやザック・ポーゼンと契約して新味を出そうとしたが、スーツの売り上げ不振をカバーするには至らなかったとみられる。アイコン的なスタイルを「今風に」微調整して、かえって昔ながらのファンが離れていったケースもあったという。
企業体力が弱っていたところに、新型コロナで自宅待機とテレワークが増え、スーツの出番の激減をさらにあおる形となった。同社は、世界45カ国に500店を展開している。