■三宅一生
日本のファッションデザイナー。38年広島生まれ。多摩美術大学の在学中に装苑賞を2年連続受賞し、頭角を現した。パリやニューヨークで経験を積んだ後、70年に三宅デザイン事務所を設立。
73年に「イッセイミヤケ」でパリ・コレクションに初参加した。「一枚の布」という考え方の服は、東洋の民族衣装のようなフラットな魅力があるのと同時に、現代的でミニマルなプロダクトであり、独自の存在感を確立。産地や企業とともに、糸から研究開発し、独自の素材や技術で物作りをしてきた。
90年代には、細かいプリーツが体にフィットする「プリーツプリーズ・イッセイミヤケ」を発表。三宅一生を代表する作品の一つ。誰もが自由に心地よく着られる服という発想は、多くの女性に支持され、今も続く人気商品となった。広い視野で社会を俯瞰(ふかん)した物作りは、多様性を重視する今の社会にもよく合う。感覚が鋭く、様々な取り組みで時代を先取りした。
07年には、社内に自身とデザインチームによる「リアリティ・ラボ」を立ち上げ、「21世紀の課題に応えたい」と衣服デザインの可能性を探り続けた。こうした取り組みは、次世代を担う人材育成にもつながった。三宅デザイン事務所で経験を積んだデザイナーには、「CFCL」の高橋悠介や「マメ・クロゴウチ」の黒河内真衣子など世界で活躍するデザイナーも多い。
ファッションや文化の承継にも取り組んだ。多くのデザイナーに欠かせなくなった京都服飾文化研究財団(KCI)の設立を、ワコールの創業者塚本幸一氏に強く要請し、立ち上げのきっかけを作った。六本木のデザインミュージアム「21_21デザインサイト」でのアート展の企画運営なども積極的に行った。
10年には文化勲章、16年には仏レジオンドヌール勲章コマンドール位を受章。
22年8月5日、肝細胞がんのため都内の病院で84歳で亡くなった。
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