アニタは、下着や水着を展開する1886年創業の老舗ドイツメーカーだ。中でも乳がんで乳房を切除した人向けのブラジャーとバスト用プロテーゼを扱う「アニタ・ケア」は高い品質が信頼され、世界中で愛用されている。先日、輸入販売するアイ・ピー・エフで行われた新商品説明会のために来日したアニタチームに、現状と今後の日本での展開について聞いた。
(ライター・川原好恵)
――アニタ・ケアは何カ国で販売しているか。
世界60カ国以上で販売しています。70年代半ばからプロテーゼを販売し、現在3種類のテキスタイル製、21種類のシリコーン製、8種類の部分用シリコーン製のプロテーゼがあります。様々なニーズや好み、そしてサイズに合わせて選べるようにSKU(在庫最小管理単位)は200以上に上ります。
――主な販売先は。
日本同様、下着専門店で販売されるほか、海外では百貨店の下着売り場、薬局や病院など様々なチャネルで販売しています。
売り上げは世界中で伸びています。理由の一つは、世界中で乳がんに罹患(りかん)される人が増えているからと考えられます。早期発見と再建手術は浸透していますが、プロテーゼの技術も日進月歩で進化しており、日常生活に合うナチュラルなシルエットを提供できるようになっていることもあって、多くの女性に選ばれています。人口の高齢化が進み、多くの国で治療体制が改善されていることも理由にあげられるでしょう。
――ベストセラーは。
スポーツ用に開発されたフルブレストフォーム「Active1054X」です。肌側に溝を入れることで肌との接触が最小限に抑えられ、空気が循環して過度の発汗を防ぐ機能があります。軽量なうえ、快適な肌環境としっかりとしたホールド感を得られることが人気の理由でしょう。
最新の「Velvety1066X」は、敏感になっている瘢痕(はんこん)組織を鎮静化する機能を持つ超ソフトな表面が特徴です。溝をより細かく入れることで肌との接触が減り、空気の循環と温度調節がしやすくなっています。従来のプロテーゼと比較して最大35%の軽量化に成功し、圧力が軽減され、リンパ浮腫(ふしゅ)にも対応します。大きなサイズでもぴったりフィットします。
――日本市場での目標は。
まずはウェルネス関連の見本市出展やSNSの活用などで、ブランド認知度を高めたいと思います。医療従事者、必要としている乳がん術後の人に説明することで、市場の信頼と信用を確立したい。同時に流通チャネルの拡大も課題です。日本でも病院や薬局、アピアランスケア商品を扱う専門店にアプローチしたり、ECを拡大したりして接点を増やしていきたいです。
――乳がん術後の選択肢として広がればいいですね。
医療機関との連携は必須で診断時や術後ケア時に正しい情報を提供することで患者さんの選択肢が増えることになります。今後、日本人に合わせたサイズやフィット感を追求するほか、湿気の多い気候に適した素材、快適性を重視したデザイン、独自の美的感覚など、日本の消費者の好みに合わせて製品をカスタマイズすることも考えています。