アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年春夏は、東京を離れて世界へと飛び出したデザイナーの帰還イベントとともに、若手デザイナーたちのショーが相次いだ。東京の中堅デザイナーの中では、やはりメンズブランドのコレクションが目立つ。
(小笠原拓郎)
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アンリアレイジ(森永邦彦)はアマゾン・ファッションの「アットトーキョー」で、これまでのクリエイションを振り返る形のショーを見せた。会場の中央にはランウェーを二つに分けるように壁が置かれている。そこに緑のレーザーの文字が浮かび上がる。「ア・ライト・アンライト」、まさに光が今回のコレクションを象徴する言葉となる。モデルたちが登場して壁の前に立ち、フラッシュが照射されると、壁にくっきりとモデルの影が残像となって残る。
太陽光に当たると黒く色が変わるハイテク素材を使った19年春夏の「クリアー」から始まり、18~19年秋冬の「プリズム」など近年のコレクションから09年春夏の「球体、三角錐、立方体」など印象的なコレクションが続く。文学からイメージを広げた初期のクリエイションから、「形」にこだわり始め、やがてハイテク技術を取り入れるようになった。熱で色が変わる、光が当たると柄が浮かび上がる、携帯電話のフラッシュ写真で柄が浮かぶ。形にこだわりながらもハイテク技術を取り入れるようになったのは、自らの居場所を探していった結果であろう。
パリ・コレクションの常連になり、東京から来たブランドとして他にはないアイデンティティーを求められた。人がやっていない道を探し、森永の視線を通した今の東京らしさを描くため、この表現にたどり着いた。しかし、ときにハイテク技術は形を阻害し、フォルムを犠牲にする。あるいは技術に溺れ、着る物としての服のロジックの中で意味を持たないこともある。なぜなら、携帯電話のフラッシュ機能で撮影した服を見ることなんて、日常生活の中ではほぼ無いことだから。
それでも、森永がハイテク技術にこだわることには意味がある。それは、その技術の発達とともに新しい価値が生まれることがあるから。携帯電話のフラッシュ撮影の画像が、将来、違う技術と結びついて新しいロジックを生み出す可能性もあるからだ。ただ、それでも現代のファッションデザインとしては、テクノロジーを日常の服にどう収めるのかは常に課題となる。ハイテク技術が珍しい手品のような見え方ではなく、着るシチュエーションの中にぴたりとはまった時に、新しいファッションデザインとしてのロジックは成立する。世界のファッションビジネスにおいて自らの居場所を見つけた森永には、服のなかにあるハイテク技術の確かな居場所を探し続けて欲しい。
(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)