アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年春夏の若手ブランドのコレクションは、コンセプチュアルになりすぎて服の表現力が追いついていないブランドもある一方で、プロダクトのクオリティーの高さを感じさせる新人も登場した。今後の東京を担うことができるか、そのビジネス展開に期待したい。
(小笠原拓郎、須田渉美)
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ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)のショー会場となった東京タワー内にあるスタジオには、真四角の木枠がオブジェのように置かれている。そこに登場するのは、柔らかなピンクやブルーの透け感を重ねたレイヤードスタイル。ドレスやチュニックにはオリーブのような植物が描かれ、レパードや昆虫の柄をドレスやボトムにのせる。
モデルたちは木枠の中に納まり、まるで博物館の展示のような構成で見せる。ツイードタッチのトップやチュニックはヘムがフリンジのディテール。ラメのヘッドピースがコントラストとなる。透け感のあるカットジャカードやレイヤード、ひものアクセサリーでナチュラルな気分を重ねる。
テーマは「ナチュラル・ヒストリー・プロジェクト」。自然を背景にして博物館の展示のような見せ方にこだわりたかったのであろうが、この見せ方をするのであればモデルを増やしてスピード感を入れて見せないと冗長になってしまう。東京を代表するブランドでもあるので、その実力が十分に伝わらなかったのが残念。
アマゾン・ファッション主催の「アットトーキョー」には、ベッドフォード(山岸慎平)とクリスチャン・ダダ(森川マサノリ)が登場した。東京・渋谷の立体駐車場を舞台にしたジョイントショー形式のコレクションだ。いずれもメンズコレクションはヨーロッパですでに見せているが、新作となったのはクリスチャン・ダダのレディスコレクション。シャツを解体・再構築するようなアイテムがメインとなる。デコンストラクトのシャツジャケット、バックに揺れるシャツスリーブを飾った白いシャツ、ビュスティエディテールのシャツドレスといったアイテムが揃う。
白いシャツをベースにしたクリスプなタッチの一方で、ブラックのランジェリードレスやデニムを切り裂いたスカートでフェミニンなムードを持ち込む。メンズのイメージが強いブランドだけに、レディスが新鮮に見えた。
初のショーのマラミュート(小高真理)は、今回の新人の中でもプロダクトのクオリティーの高さを感じさせる。ニットとスカーフ、ウェスタンの要素を取り入れながら、シンプルなラインに納めている。スカーフディテールを切り替えたセットアップ、フリンジをヨークに飾ったシャツとコンチョベルト、デニムのセットアップやジーンズを割ってスカートのように変形させたアイテム。程よくデザインを入れたリアルスタイルが揃う。
ニットドレスには大きな花柄とほつれたように揺れる糸が立体感を作り、ラメやゴールドを入れたフィッシュネットスカートで透け感と輝きを重ねた。
コトハヨコザワ(横澤琴葉)はアメリカの学生寮の一室やブルドーザーのある工事現場など日常のワンシーンを背景に、身の回りにあるものをコラージュしてフレッシュで程よくラフなデイリーウェアを見せた。アイコンとなるプリーツには、生活の道具や食べ物、下着などを行儀良く並べてプリント。そのオリジナルテキスタイルのドレスの上に、部分的に解体したブルゾンを羽織ったりスポーティーなタンクトップや水着をレイヤードしたりと、ポップで軽快なムード。
ブラを肩掛けのレザーバッグにするなど、小物の合わせ方が楽しい。過去のサンプルをアップデートしたクリエイションも見どころの一つ。ハリのあるパンツは逆さにしてフロントジップのディテールの付いたロング丈キャミソールに。柔らかなプリーツのパンツは半分にカットし、レイヤードアイテムとしてフェミニンな印象を作る。
フミク(林史佳)は「明晰夢(めいせきむ)」をテーマに、大人のガーリースタイルと機能素材のアウターをドッキングしてストリートっぽさを出した。プリーツにギャザーを寄せて流したデニムのスカートを重ね、トップにはマウンテンパーカを合わせる。その胸元には袖をたらしたディテール。ワーク系のワイドパンツの上から、機能アウターを腰に巻いて袖をリボン結びしたレイヤードスタイルも。
トップには、レトロなフラワープリントのキャミソールにフリル装飾も組み合わせる。デコラティブに見せているが、薄手で光沢があり、しなやかな機能素材をレイヤーすることで、ライト感や今っぽさを感じさせている。
(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)