「アデリー」は、18年春夏にスタートした婦人服ブランド。コンセプトは「着てテンションが上がり、1日中華やかな気分で過ごすことができる非日常着」。透け感のある素材使いや刺繍への評価が高く、昨年10月に開かれた合同展示会プラグインでは、来場者投票で2位を大きく引き離してグランプリに輝いた。
(中村善春)
♦ファッションのパワー
手掛けるのは、テレビ番組の制作やイベントの企画・運営を手掛けるサプライズ。同社は有名お笑い芸人のマネジャーだった芥川格也社長が08年に独立して起業した。タレントや芸能人の衣装を扱う中で、ファッションの持つパワーに気付いたという。スタイリストとのネットワークも婦人服の新事業につながった。
「ファッションは着る人のテンションを上げることができる。笑いでもテンションは上がるけど、一瞬で終わってしまうし人数も限られる。対してファッションは1日中、華やかな気分で過ごせるし、不特定多数に広がっていく。それがファッションの魅力」と芥川社長。「今度はファッションブランドで一般人のマネジャーになって、一人でも多くの女性をプロデュースしますよ」とノリノリだ。「マネジャー魂が染みついちゃっているのかな」と笑う。
♦誇らしく背伸びせず
事業化に向けて「動きは速かった」(小松未季ディレクター)。半年間でコンセプトをまとめ、外部の協力体制を整えた。プランを詰めながら生地、パターン、デザイン、付属、縫製など製品化を準備した。腐心したのはブランドの特徴を打ち出すことと、それを物作りに落とし込むこと。議論の中から「女性の気分を盛り上げ、心躍る日々を過ごすための服」「記憶に残る服」というコンセプトが浮かび上がり、〝エモ―ショナル〟というキーワードにまとまった。それを透け感のある生地使いと刺繍へのこだわりで表現することにした。
事前に集めたバイヤーの意見も参考にして、ブランドを印象付けるアイテムをワンピースに決めた。ワンピースは「1枚でスタイリングが完成し、コーディネートが作りやすい。世界観を演出するのにも適している」(小松ディレクター)と、打ち出しを絞ったこともブランドの分かりやすいイメージ発信に結び付いている。
価格にもこだわる。対象とする20代後半から30代の女性が「誇らしく着ることができて、背伸びせずに買える値段」を想定して、ワンピースで3万円前後~6万円台に設定した。同時に、非日常服は「値段と納得・実感のバランスが重要」と考えて、試着や接客時の会話に力を入れるほか、インスタグラムやホームページでは積極的に着こなしを提案し、購入者の納得感を高めている。
現在の売り先は個店専門店8店と自社EC。スタッフが接客してブランドのファンを広げていく狙いから、期間限定店も出している。
今後は、有力セレクトショップとの取引拡大を足場にしてステップアップを目指す。
「服の販売にとどまらず、おしゃれを楽しむ心地良さを広げていきたい」として、「文化を編集し、発信する直営店を京都に出すことが夢」(芥川社長)と話す。