「退職代行の利用」や「ホワイトすぎて退職する若者」など、20代の若手社員に関するニュースが目につくようになりました。多様な価値観や働き方が交錯する時代、若手の価値観に戸惑いを覚える上司世代も少なくないと思います。しかし、こうした現象は単なる甘えと片付けて距離をおくのではなく、背景にある価値観の違いに目を向け、歩み寄る相互理解の姿勢こそが今求められています。
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指南役に囲まれ
今回、SHIBUYA109ラボは金沢大学金間研究室と共同で、20代の「若手世代」と40代以上の「上司世代」を対象に、職場におけるコミュニケーション、仕事の進め方、ビジネスマナー、成長意識に関する調査を実施しました。統計学的手法を用いて41項目を分析した結果、24項目で明確なギャップが認められた一方で、残り17項目については両世代に共通する認識があることが分かりました。
例えば仕事の進め方は若手世代の多くが「マニュアルの存在」を重視する傾向にあるのに対し、上司世代は「自分でやり方を考えて進めるべき」という意識が根強いことが浮かび上がりました。若手世代が日常的にインフルエンサーやハウツー動画といった〝指南役〟に囲まれて育ってきた背景を考えれば、丁寧なガイドを求める姿勢は自然なことかもしれません。
上司世代対象のインタビューでは、「マニュアル通りにやることに慣れすぎて、臨機応変さや想像力が不足しているように見える」といった声も聞かれ、こうしたズレが現場のすれ違いを生む一因となっていることがうかがえます。
成長意識についても、「失敗を極力避けたい」と考える若手と、「失敗を糧にしてこそ成長がある」と考える上司世代の違いが目立ちました。さらに「周囲に追いつくこと」に重きを置く若手と、「自分ならではの武器を育てたい」と考える上司世代との間にも、成長に対する捉え方の差が見られます。
個人の自由尊重
しかし、ギャップばかりではありません。調査では、両世代で共通認識を持っている項目も存在しています。例えば「髪型や服装は本人の自由であるべき」「一人ひとりに合ったフィードバックを大切にすべき」といった意識には、世代を越えて個人の自由を尊重するといった価値観に共感が集まりました。
また興味深いのは、定時退社や出社時間の自由、年賀状や飲み会の参加自由などについては、若手よりもむしろ上司世代の方が柔軟な姿勢を見せているという点です。
上司世代を対象にしたインタビューでは「自分たち(40代)は昭和の働き方からの転換期にいた世代である」「今はマナーを学ぶ機会も怒られる機会も少ない。だから私たちが率先してやればいい」といった、時代の流れを受け入れ、若手に昭和的な働き方を押し付けないように細心の注意を払い、忖度(そんたく)しすぎているのではないか?と思われるくらい丁寧に接しようとしている様子が印象的でした。
結局のところ、世代間ギャップとは対立するものではなく、「違いを知るための入り口」にすぎません。異なる価値観を否定せずに理解しあうこと。そこに、誰もが働きやすい環境づくりのヒントが隠されているのかもしれません。
