Z世代はデジタルネイティブ世代とも言われていますが、彼らは最新技術を使いこなす達人でもあります。エンタメを通じて自然と最新技術に触れる日々を過ごしており、例えばカメラアプリ「SNOW」では、写真をアップロードすると自分そっくりのアバターが生成されたり、人気アニメ風にイラスト化されたりと、AI(人工知能)技術を活用した機能を遊び感覚で使いこなしています。彼らはこれらをSNSのアイコンや投稿に使うなど、日常の一部として楽しんでいる様子が見られます。
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上司の特徴学ぶ
23年は「AI元年」とも言われ、チャットGPTなどの生成AIが一気に広まりました。Z世代もこのチャット系AIをすばやく日常に取り込み、活用の幅を広げています。
今年4月、SHIBUYA109渋谷店館内で15~24歳の女性約100人を対象にAIチャットの利用実態を調査したところ、「頻繁に使っている」「たまに使っている」と回答した人は全体の6割を超えました。
使用目的は「勉強のサポート」が最多で、そのうちチャット系AIが得意とする語学以外の分野でも4割以上が利用していることがわかりました。単に「レポートを丸投げする」ような〝ズルい〟使い方ではなく、「先生」や「家庭教師」的な存在として質問したり、わからないところを解説してもらったりと、能動的に使っているのが印象的です。
ある高校生は、「塾で習った数学の問題をAIに解説してもらって復習している」と話してくれました。さらに驚いたのは、AIを〝相談相手〟としても活用していること。けんかした友人との仲直り方法を聞いたり、20代社会人は「上司に報告する前に、上司の特徴を学ばせたAIに内容を添削してもらう」など、より円滑なコミュニケーションを求めるために活用しているという声もありました。
〝安心材料〟の一つ
使い方の是非はいったん脇に置いておくとして、これらの活用方法の背景にあるのはZ世代はSNSなどで事前に情報収集し、「想定外」をなるべく避けて行動したい意識の表れなのではないかと我々は見ています。AIはその〝安心材料〟の一つになっているのです。
ただし、AIに頼る一方で「AIに代替されない力を身につけたい」という意識も強く、私たちが23年7月に実施した調査では、Z世代の7割がそのように回答しています。
つまり、AIを使いこなすことがゴールではなく、〝AIを使った先で何ができるか〟を考える視点が彼らにはあるのです。
4月に新入社員を迎えたという読者の方も多いと思いますが、今の若者たちは学校でAIを当たり前に使ってきた「AIネイティブ第1世代」です。
だからこそ、私たち上司や先輩世代が、AIとの付き合い方のバランスをとる必要があります。
例えば議事録や資料作成はAIで効率化しても、企画や問題発見のように〝考える力〟が必要な業務は、あえて時間をかけて自分でトライしてもらう、若者の成長機会を作るためにも、そんな〝効率化しない時間〟も大切にしたいところです。
そのためには、大人世代もAIリテラシーをしっかり身につけ、若手の成長につながるAIの使い方を一緒に模索していく姿勢が必要です。AIと共存しながら〝人間にしかできない価値〟を育てていくことが、これからの組織の鍵になるのではないでしょうか。
