《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「PARANOMAD」 丹後で始めた布作りで海外に挑戦

2025/11/28 10:59 更新NEW!


パラノマドの原田美帆さんは丹後を紹介するツーリズムやライターとして取材も行っている

 京都・丹後を拠点にするテキスタイル「PARANOMAD」(パラノマド)は、今年で設立から10年が経ちます。主宰する原田美帆さんは、織機を購入して、自社工場兼ショップの「MADO」を23年にオープン。他の国内産地とも連携し、インテリア商品を中心にテキスタイル製品を企画生産しています。

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自社工場で信頼

 原田さんは、京都市立芸術大学で彫刻を学び、インテリアコーディネーターとして就職。一枚のカーテンが部屋の印象を変えることを実感し、オリジナルの布でカーテンを作りたい思いで独立しました。情報もつても少なく手探り状態の中、知人の紹介で丹後に移住しました。地域と関わりながら作品の構想をしていく中で、布をデザインし、外注制作してもらうには、織り方の知識が必要だと思い、織物技能訓練センターに1年半ほど通い詰めて様々なことを教わったそう。原田さんが目指すバイオーダーの小ロット生産は、外注は難しいと分かり、自社工場の設立を決意。移住者でしたが、地域の方に工場を構えたことで信頼が得られました。

自社ファクトリーの織機で制作する

 海外での販路開拓を目指し、今年からニューヨークの合同展「ショップオブジェクト」に出展しています。丹後の風土を写したシリーズ「TATEIWA」のタペストリーを中心に出品。織機と手仕事を融合し、オーガニックコットンのガラ紡糸を緯糸に使用した生地の特徴は、柔らかな弾力性、肌あたりの良さ、保温性です。そこにブロックプリントを応用して、織物の美しさを生かすハンドプリントを一点ずつ施しています。

合同展ショップオブジェクトの「パラノマド」のブース

 これまで「アーバンアウトフィッターズ」をはじめ、数社からオーダーがありました。出展を重ねて得られる気づきや学び、出会いも多いそう。商品の色展開や規格サイズの調整、手に取りやすいエントリー商材の必要性を感じ、改善を続けています。

産地のバトンに

 最近の傾向は丹後ちりめんを用いるカーテンの依頼が増えていることです。丹後ちりめんの生地を仕入れ、取り付け位置や仕様を確認して図面を作成し、縫製工場と連携して仕立てを行います。丹後ちりめんの質の高さと、自身の技術が合わさることで、産地の魅力を生かした製品提案につながっているそうです。

 丹後は移住者が少しずつ増えている一方で、繊維産業は後継者不足などの厳しい環境にあります。「自分がいたことで産地が次につながるための小さなバトンになれたら」と原田さん。丹後の魅力や布の可能性を、これからも広く伝えていけたらと考えています。

10月の渋谷スクランブルスクエア9階のgarecoさんちギャラリーでの限定店

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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