ジャカード織りの生地で婦人服や服飾雑貨を展開する「POLS」(ポルス)が、インテリア分野に踏み出しています。10月に大阪で初開催された展示会「糸_の祭展」(イトヘンノサイテン)では、2年前から販売するスツールと試作品の壁紙も展示しました。インテリア用途に可能性を見出す営業担当の大岡彩織さんにうかがいました。
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身近な暮らしの中に
ポルスを支えるのは、地場産業の播州織の技術です。産地の活性化を目的に、1901年創業の先染め織物メーカーの丸萬(兵庫県西脇市)が、テキスタイルデザイナーの梶原加奈子さんと協業でスタート。今年10周年を迎えました。シーズンごとに新作を発表し、「テキスタイルを楽しむ」奥深さを届けたい思いがあります。
インテリア用途は、スツールの生地の開発から始まりました。播州織はシャツ地のような薄手の綿織物が主流です。椅子に用いる生地は、摩擦に強いことや耐久性が求められます。糸の太さや原料、織りの密度などを変えながら試行錯誤を重ね、そして特殊加工技術を持つ企業との出会いもあり、椅子張りに使える生地を実現。23年に販売開始しました。

ポルスのテキスタイルは「アートのようだ」と評価されることも多々あります。もっと身近な暮らしの中に取り入れてもらおうと、壁紙の開発を始めました。紙の裏張りができる企業に出会い、試作品が完成した段階です。製品化に向けては、販売価格や検査基準などの課題があります。アパレル用途とは異なる性能や性質が求められることを、一つひとつ解決すべく取り組んでいます。
販売面でも異なる観点が必要になります。ポルスを扱っている洋服や雑貨が中心の売り場では、来店客の目的が異なります。また、家に迎え入れるものは、ご家族と相談して慎重に選ばれるなど、すぐに購入に至らない場合が多いそうです。東京インターナショナル・ギフト・ショーへの出展で家具のセレクトショップとつながり、期間限定店から取引を始めて、顧客層の幅を広げようとしています。

相乗効果を生む
こうした活動は丸萬にも良い影響を与えています。ポルスの製品によって、生地の使い方を具体的に想像できる点も強みとなって、OEM(相手先ブランドによる生産)の依頼が増えました。生地の生産が安定して、稼働率は上がり、「産地の活性化」という目標を達成することができました。来年には、西脇市内の旧家屋を改装し、事務所兼ショップの「ポルスルーム」をオープンする計画です。世界観を体感できる場所にして「こんなおうちに住みたいと思ってもらえたら」と大岡さん。産地発のブランドとして培った技術とデザイン、経験を土台に、より幅広いアイテムにも取り組みたいと意欲的です。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。

