小売業の成功戦略とは?(WGSN)

2018/02/16 04:29 更新


2017/18年秋冬が終わりに近づく中、WGSN小売分析プラットフォームInstockのデータから消費者需要の変化とキーメッセージを読み解く。今後に備えて知るべき5つの点を以下に挙げる。


1.アパレルの入荷量減少に伴い、取り扱いブランドや製品構成を大幅に見直す

リテーラーは余剰在庫を管理するために新商品の数を減らした(前年比−1.62%)。しかし全体的な商品数には影響が見られない(前年比+2.34%)。消費者はモノよりも体験やサービスにお金をかけ、この傾向は続く。服の購入が減る中、リテーラーはシェアを増やすために試行錯誤している。


2.リテーラーはさらなる値下げを行っているが、購入は増えず、消費者の厳しい目に応える必要がある

前年と比べて値下げ傾向にあるが、在庫切れの商品数は依然として変わらない。英国では経済が停滞し、政治的にも社会的にも不安定な状態が続き、消費者は金額に見合う価値を求め、消費に対して慎重な姿勢を持つ。つまり、値下げだけでは差別化要因にならない。

今成功しているブランドは、ASOSやboohooのようにサービスに特徴があるか、JoulesやTed Bakerのようにデザインに特徴がある。消費者は金額に見合う価値について今までよりも深く考えている。Arketは品質にこだわり、ASOSはサービスやセレクションにこだわる。このように、明確なコミュニケーションを通して製品の特色を伝えることがスタンダードになる。


3.値下げ前に売れるようにシーズン直前まで入荷を待つ

2017/18年秋冬のアウターウェアの本格的な入荷はシーズン直前からだった。2016年は9月に入荷のピークを迎えたが、2017年は10月だった。これは気候の移り変わりに対応した結果であり、より多くの消費者が値下げ前にアウターウェアを購入した。

在庫切れになったジャケットとコートの平均価格は前年よりも高く、売上高アップに貢献した。リテーラーは夏向け製品カテゴリーにおいて同様のアプローチを取ることができる。変化に素早く柔軟に対応するのが成功の秘訣だ。


4.サステナビリティをコアバリューとする

サステナビリティはもはやニッチではない。事業の中核的な価値であるべきだ。H&MやZaraのようなハイストリート系の大手リテーラーはサステナブルなコレクションを拡大した。Selfridgesは社会と環境に配慮したアイテムを揃えるBuying Better(バイイング・ベター)というセクションをウェブサイトに加えた。GucciとMichael Korsは毛皮の使用を廃止した。

消費者の認識変化を受けてこのような動きが加速している。ファッション消費が環境にもたらす影響について真剣に考えるようになったのだ。そして消費者はサステナビリティ関連の問題について懸念を抱き、強く主張するようになった。

その結果、素材調達やアパレル生産に関して透明性を提供することがリテーラーにとって重要になった。消費者は金額に見合う価値を求めているので、中核的な価値としてサステナビリティの重要性が高まる。


5.製品に楽観的なムードを反映させて消費者を元気づけ、エンゲージメントを図る

2017/18年春夏の売れ筋を見てみると、消費者の気分の変化がわかる。社会経済情勢の破滅的な状況に落ち込む消費者は、明るく楽観的になれるような製品を求めるようになった。スパンコールやもこもこジャケットの人気が高まり、カラフルなクリスマスセーターが復活した。Gucciのマキシマリズム的なデザインも影響力を発揮している。

この傾向が2018年も続くだろう。リテーラーはキラキラ感のあるフットウェア(例:Victoria Beckhamによる2018年春夏コレクションのパンプス)、カラーブロックのニットウェア、派手なスタイリングを取り入れていくべきだ。

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