セブン&アイがそごう・西武を売却へ コンビニ領域に経営資源を集中

2022/02/02 06:29 更新


 セブン&アイ・ホールディングスは傘下の百貨店事業会社、そごう・西武を売却する方向で最終調整に入った。複数の投資ファンドや事業会社を売却先として検討しており、2月中に選定を始める考えだ。成長性、効率性のあるコンビニエンスストア領域に経営資源を集中し、事業ポートフォリオを見直す。

 「寝耳に水。売却話を聞いてびっくりした」と1月31日夜、そごう・西武の社内は騒然とした。セブン&アイが親会社となった06年以降、そごう・西武は基幹店に改装投資を集中し、構造改革を実施してきた。相次ぐ不採算店の閉鎖、希望退職の実施によるリストラ策を断行した。テナント比率を75%にして百貨店を組み合わせてハイブリッド化した所沢、100%定借化した東戸塚をはじめ、福井、秋田は21年3月に面積を減らして営業を継続した。百貨店と定借の比率は25年度に4対6へ逆転することを中期の数値目標にし、池袋、横浜、千葉などの基幹店も同様に定借の比率を増やし、低コスト運営の移行へ着手していた。

 しかし、コロナ禍の直撃で、百貨店事業は21年2月期の営業損益が66億円の赤字で、今期も45億円の赤字の見通しだ。

 この間、グループで相乗効果を発揮するまでの収益は生み出せなかった。チェーンオペレーションで効率経営を指向するセブン&アイと、地域マーケットの最適化を目指しながらも高コスト・低粗利構造から抜け出せない百貨店の溝は埋まることがなかった。

 セブン&アイの大株主である海外の投資ファンドは、そごう・西武やGMS(総合小売業)のイトーヨーカ堂などを切り離し、主力のセブン―イレブンに集中するよう求める圧力を強めていたが、そごう・西武の売却は既定路線であった。水面下では以前から、売却話が相次いでいた。しかし、セブン&アイが買収した簿価に見合う2000億円規模の高額な条件が足かせとなって成立してこなかった。

 ある国内の投資ファンドは「百貨店の強みは顧客基盤にあるが、最大の魅力は都心の好立地にある不動産」と言い切る。しかし、そごう・西武は相次ぐリストラで自前の不動産がほとんどない。21年9月に西武池袋本店の不動産管理子会社、セブン&アイ・アセットマネジメントをそごう・西武に吸収・合併し、建物を自前化したが、土地を一部所有するにとどまる。「不動産に乏しい百貨店に企業価値を見いだすことができない」(投資ファンド)という。

 店舗閉鎖や人員削減による縮小均衡では負のサイクルから抜け出せない。百貨店は顧客、地域とのつながりが生命線だ。「全てはお客様のために」という地道な取り組みの積み重ね以外に再生の道はない。



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