【トップインタビュー】クロスプラス株式会社 代表取締役社長 山本大寛氏(PR)

2023/10/23 00:00 更新



 今期(24年1月期)は、上期を終えて売上高275億円超と予想を上回る水準となりました。営業利益および四半期純利益は第2四半期末として上場来過去最高を更新しました。アパレル小売については、外出需要の拡大や各種イベント増加で売りやすい環境でした。アパレル卸売については、円安の継続や原価高騰で、伸びにくい環境下ではありましたが、商品力強化を進めてきた結果、収益力が向上して、結果的に筋肉質な体質になりました。中期経営計画(23年1月期~25年1月期)の最終年度は売上高650億円、営業利益10億円を数値目標に掲げています。今期をその弾みにしていきたいです。

 私たちは中期経営計画で「人生100年時代の豊かなライフスタイルの創造」を目指すべき企業像として掲げています。コロナ禍以降、消費者のライフスタイルは大きく変わり、これからも変容し続けていくでしょう。それに対応するために、猛暑対策の「涼活本舗」、防寒対策の「温活本舗」、推し活グッズの「推部屋plus」など、ライフスタイル商材を充実してきました。さらに、今年9月には化粧品の製造・卸販売を行うアイエスリンクを子会社化しました。ヘアオイルの「エリップス」、ジェルネイルシール「ビューティーアベニュー」など個性的な商材を展開しています。当社とのシナジーが発揮できるでしょう。今回のようなM&Aも含めて、「アパレル事業」と「非アパレル事業」の双方を成長させていき、全社一丸となって中期経営計画を達成していきます。

商品力強化

ダントツ商品の開発

 当社の主力アパレル卸売では昨年自社のNBの数を24から令和シニアに向けた「ドゥファム」や流行に敏感な女性に向けた「ウイエ」、コスパ重視で選ぶZ世代向けカジュアルトレンド「アムリール」、働くママのための時短コーディネート「ブランプラス」など9に絞りました。これまでは似たような型のアイテムもあり、生産ロットがまとまらなかったり、コストや品質でのメリットが出しにくく、ドロップする企画もありました。

 そういったことを改善するために、ブランドを絞った上で、分かりやすいコーディネート提案に力を注いできました。ブランドごとにシーンを明確にした売り場作りを進め、それに伴いシェアを拡大してきました。さらにコーディネート提案だけでなく、素材軸での単品提案を強化していきます。お客様の要望に応じて、コーディネートと単品を柔軟に提案していきます。

 NB強化の中で、もう一つ力を注いでいるのは、一目で当社の商品だと消費者に分かってもらえるような「ダントツ商品」の開発です。ダントツ商品で大切なのは伝え方やストーリー性です。デザイナー、営業、MDなど関わる社員一人ひとりが自信をもってお客様に提案できるような、ワクワクする商材を生み出していきます。一例ですが、ニットでは毛玉になりにくく、静電気も起こりにくい素材を使った機能性ニット製品「テイク・ニット・イージー」が年間120万枚を売る定番ヒット商品です。こういったダントツ商品を機能性デイリーベーシックウェア「クロスファンクション」ブランドとして、店頭で訴求していきます。

CROSS FUNCTION

EC戦略

ブランド戦略で推進

 ECは競争が激しくなっていますが、まだ伸びていく、成長マーケットとみています。展開しているサステナブルなレディスファッションブランド「for/c」やマタニティーや雑貨など全体的に伸びています。さらに、今後はブランド数自体を増やす必要があります。

 下期立ち上がりの8月には豪州のサステナブルシューズブランド「パイピングホット」、カジュアルガーリー「アムリールガール」、ファッションブランド「エルガール」を立ち上げました。さらに、ベーシック機能商品「クロスファンクション」、ミセス向け「ワンズトゥルー」を展開し、通期ではトータル25ブランドになる予定です。通常の卸売ではどうしても取り込みが難しい客層や分野、さらにはECだからこそ展開しやすい商材を打ち出していきます。例えば、アムリールガールが展開するスクールの属性のECブランドは決して多くないですし、パイピングホットのようなアイテムを扱うのも初めてです。

Amourire girl
ELLEgirl

 ただ、最初から一つのブランドで色々なECモールに出店して、大きな売上を目指すという戦略は採りません。まずはそのマーケットで、どういう特性があって、どういうものが売れるのかを見極めていきます。市場特性を学んでいくことが必要です。その中で拡大出来る手応えがあれば、そこに対して投資を進めていく。スクラップ&ビルドを繰り返しながら、まずは「小さく生んで、体制を整える」ことが大切です。

サステナビリティへの取り組み

脱炭素、社会との共生

 脱炭素の取り組みとして、再生ポリエステルやオーガニックコットンの活用を進めています。上期で110万着、全商品の6%に環境配慮型素材を用いました。さらに、段ボールの使用を減らす目的で、得意先への配送に循環配送箱「エコビズボックス」を活用し、上期だけで段ボールを1万3000個削減しました。ほかにも、当社の東京店の使用電力を再生可能エネルギーに変更するなど、環境に配慮した取り組みを進めています。

 サステナブルは暮らしと社会との関わり方も大切になってくると思っています。一つは企業・自治体・学校法人との取り組み拡大です。学校法人との取り組みでいうとインターンシップを実施し、ファッション専門学校生の就業体験機会を創出しています。ほかにも、「リデザインプロジェクト」で障がいを抱える人の物作りのお手伝いや、女性アスリート向けのセットアップスーツを企画するなどジェンダーへの取り組みも進めています。

 会社全体にサステナブルの取り組みを浸透させるのはまだまだこれからです。今後は今以上に学ぶ機会を設けていきます。


人材育成への取り組み

講習会開催、海外出張で現場視察

 企業成長の基盤となる、人材育成への投資を常に続けています。部署別より小さな単位で業績管理を行うとともに、役員が業務に対する考え方・視点といった営業ノウハウを直接伝えるMD検討会、エクセルなどのビジネスキルを学ぶデジタル講習会、デザイナーやパタンナーに向けた3Dモデリスト講習会などを進めています。3Dモデリスト検定の受講も推進し、2級・3級を合わせて計15人の合格者がいます。社内人材をコーチにすることで、教わる側だけでなく、教える側も学ぶことができます。今後は外部講師を招いてチーフデザイナー研修、リーダーシップ研修なども予定しています。


 さらに現場を見ることも大切にしています。コロナ禍で渡航が難しかった中国や東南アジアに若手からベテランまで上期で140人程の社員が一斉に渡っています。物作りの現場を見て、肌で感じるのは大切なことです。こういった取り組みを絶え間なく続けていくことでたくましい社員が育ち、それが企業成長につながると確信しています。


https://www.crossplus.co.jp/

企画・制作=繊研新聞社業務局



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