【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】20年春夏ニューヨーク・コレクションは、いつになく会場選びにこだわったショーが相次いでいる。数年前までは考えられなかったブルックリンやハーレムといったエリアがショー会場に選ばれ、観客たちはマンハッタンからその会場に足を運ぶことになる。ニューヨークの治安の改善とともに、かつてはメイン会場に複数のテントを建てて運営していた効率の良さも捨て去ることになった。
(写真=大原広和)
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ノンシャランなムードと凛(りん)とした空気が共存するザ・ロウのクリエイションがさえている。この春夏は黒と白、エクリュとわずかなブルーで描くストイックな世界。
クロップト丈のパンツスーツ、たっぷりとしたラペルのブラックコート、マスキュリンのりりしさをはらんだエレガントなテーラーリングが揃う。白いシアードニットと白いタンクドレスの重ね着や白いペインターパンツで、軽やかなムードを演出する。中わたを少しだけ入れたシャツジャケットやフレアスカート、ボンディングクロスのような柔らかな膨らみのあるジャケットやスカート、シンプルななかに量感を彩る素材使いが心地よい。シンプルなラインにわずかに変化を作るジャケットとインナーのヘムの重なり、スカートに付いたアウトポケットもジャケットの下からわずかにのぞいてアクセントとなる。
アブストラクトな布をつなげたスカートやトップは、これまであまり見せたことのないアイテム。そこだけ、少し饒舌(じょうぜつ)な顔を見せた。



ブルックリン橋が見える波止場の建物に入ると、花壇が作られていて静寂な雰囲気に包まれる。ジェイソン・ウーは、シックな花柄をベースにしながらクラシカルなフォルムをモダンに見せた。
フラワープリントのギャザードレス、花柄にビジュー刺繍を重ねたシースドレス。ロマンティックなイメージのドレススタイルだが、花壇と同じように花柄のトーンが落ち着いていて大人っぽく見える。エレガントなドレスを甘く見せ過ぎないのは、しわ加工の生地やカットオフのディテール。ギャザーやドレープを取り入れながらラフなタッチがきりりと強さを放つ。ドレススタイルとともに広がったのはブラトップと合わせたペグトップパンツやパンツスーツ。
その美しいラインから、かつてのアルベール・エルバスの「ランバン」につながる何かを感じさせた。
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