【ニューヨーク=小笠原拓郎】19~20年秋冬ニューヨーク・コレクションは、ここ数シーズン続く停滞期を変えられるかが焦点になっている。米国ブランドのデザインの強さがもちろん第一だが、それとともにブランディングまでコンセプトが貫けるかどうか。ラフ・シモンズという有力デザイナーを抱えながら、国際市場を意識した売り方や見せ方が出来なかった「カルバン・クライン」の例からも、米国ブランドが国際的な市場性をどれくらい意識したブランディングを進めるかに注目が集まる。
(写真=各ブランド提供)
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プロエンザ・スクーラーは前シーズンのカジュアルなデニムスタイルから一転、再びコンセプチュアルな物作りへと戻ってきた。パンツスーツにはストール状のニットが巻きつき、トレンチコートにはテープ状の布が絡みつく。トレンチコートやテーラードスーツのフロントにはライダーズジャケットが揺れ、パンツにはオーバートラウザーが重なる。
このコンセプチュアルなデザインは、いかにもプロエンザ・スクーラーらしい。デコンストラクトの解体再構築のデザインは服としては面白いのだが、一方で「米国のデザイン過剰なブランドって日本では全然売れないんだよ」と指摘していたあるバイヤーの声を思い出す。そのバイヤーの予想通り、日本での事業展開はつまづいた。
デコンストラクトのデザインといえば、コムデギャルソンであり、マルタン・マルジェラである。いずれも表層的なデザインだけではない、論理性や精神性がブランディングに貫かれている。プロエンザ・スクーラーがそういったところまでやり切れるかどうか。1回のファッションショーだけではなく、売り方のデザインを含めたプロデュース力が試されている。
コーチ1941は、フラワープリントのフェミニンなフルイド(風をはらんで揺れる)ラインとマスキュリンなウェスタンディテールを重ねて見せた。フリルやギャザーを飾った花柄ドレスの襟元にはウェスタン風のボウ飾り。ジャケットはウェスタンシャツのようにヨークを切り替える。
得意のファーやシアリングコートには、モノグラム模様をのせたり、カラーブロックに切り替えたり。オンブレチェックやネルチェックのブルゾンやデニムのボンバージャケットなど、アメリカらしいアイテムも充実した。
足元はジョージ・コックス風の編み込みアッパーのスニーカーやブーツ。スチュアート・ヴィヴァースによって、コーチはプレタポルテに本格参戦したわけだが、従来のバッグ、小物類の顧客層とのズレをどのように着地させようとしているのだろうか。今後のブランディングにも注目する必要がある。