【パリ=小笠原拓郎、青木規子】18~19年秋冬パリ・コレクションは、アウトドアやワークを背景にしたアイテムとともに、繊細なドレスや伝統的なテーラーリングにもフォーカスが当たっている。コンセプチュアルに作りながらリアルなスタイルに落とし込む手法はまだ継続しているが、テーラーリングを新しい技術で現代にフィットさせることも課題となっている。
(写真=大原広和)
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ナポレオンが眠るアンヴァリッドの歴史ある建物の一角に、ガラスでできた四角い空間が作られている。ショーが始まる直前に雨が上がって、春の柔らかな陽射しが白い絨毯(じゅうたん)に影を落とす。そこにトライバルなリズムが響き始め、生々しいビョークの歌声が重なってくる。
ヴァレンティノはたくさんの花のモチーフと美しい色を組み合わせてロマンティックなコレクションを見せた。パンジー、アネモネ、ポピー、デイジー。パッチワーク刺繍に象眼、ジャカードなどさまざまなテクニックを生かして、繊細な花模様をドレスやコートに描く。ケーブルニットに違う編み地の花模様を切り替え、かぎ針編みのドレスには薄い生地をパッチワークして淡い花を描く。
赤いコートにはレリーフのように立体的なフラワーパターン。ヘムラインはペタルのように曲線的なフォルムを作る。秋冬の特徴はパンツルックが多いこと。ドレスのようなアイテムでさえパンツと合わせる。フードをかぶったガーリールックも多い。フードのひだの入れ方にも花の面影を感じる。
1月のオートクチュールで、クチュールのモダナイズを高らかに表現したのに続き、プレタポルテでも繊細な技術で美しいコレクションを揃えた。ただ、モダンクチュールともいえる軽やかさを感じた1月のコレクションに比べて、プレタポルテらしい軽快なアイテムがもう少しあってもいい。