【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】17~18年秋冬ニューヨーク・コレクションに、ノスタルジックなムードやクラシックを背景にしたスタイルが広がっている。ディテールで目立つのはカットオフ。ショルダーやウエストをカットオフして、部分的に素肌を見せてクラシックに変化を作る。
■オスカー・デ・ラ・レンタ 凛とした気分を閉じ込めて
「モンセ」のデザインデュオが手がけるオスカー・デ・ラ・レンタは、上質な素材とクチュールテクニックを生かしながらモダンに変身した。ピーター・コッピング当時の甘さは抑えられ、シックではありながらどこか凛(りん)とした空気をはらんでいる。黒のパンツルックやタキシードスーツからショーはスタートし、次第に鮮やかな色と光沢へと続いていく。
ピンクとシルバーが反射するラメジャカードのコートやドレス、メタリックオレンジのカクテルドレス。光とともに張りをいかした立体的なフォルムが美しい。ピンク、オレンジ、グリーン、ブルー、配色のバランスはかつてラフ・シモンズが得意としていた色合いに近い。鮮やかな色合わせから、後半は再び黒と白のコーディネートへ。ベルベットにビジュー刺繍をしたワンショルダードレス、ベルベットをレーザーカットで花柄に抜いたドレス、フロッキーで花柄を描いたドレスなど、モノクロの中に装飾を盛り込んだ。
■モンセ
一方、モンセのコレクションではクラシックを背景に作り込みながら、シャープでリアルなスタイルへと仕上げている。ジップのスラッシュやスリット、ラッフルを組み合わせてデコンストラクトのラインをきりりと表現する。ラッフルが揺れる白いシャツは、タキシードパンツやタキシードジャケットと組み合わせながらオフショルダーで素肌を見せる。
グレーヘリンボーンのドレスは胸元を大きく折り返してベアトップに。ふわふわのラムファーを強調したブルゾンやミリタリーパーカでマスキュリンなイメージを取り入れながら、バイアスカットのトランペットドレスやスカートで流れるような布の動きを作る。グラフィカルなサークル柄のドレス、水が滴るような柄をスパンコールで描いたドレスが彩りを添えた。
■ザ・ロウ
ザ・ロウは色調と装飾を抑えたミニマルな中に、ドレープやシェイプで変化を作った。ベージュ、ブラウン、黒、白がベースカラー。テーラードコートやレザーコートはオーバーベルトをぐるぐると巻きつけてシェイプを作る。ダブルフェイスのカフタンドレスにオーバーコート、シャツにパンツなど、全てのアイテムで装飾がそぎ落とされる。コートにボタンはなく、パンツにはベルトループもない。シャツは比翼仕立てでフラットに。そぎ落とした分、素材の質感とフォルムが際立つ。バックにコクーンのような膨らみを入れたスカート、バックヨークのフラップにドレープを取ったコートなど、細部にまで手をかけている。
■トリー・バーチ
トリー・バーチは映画「フィラデルフィア物語」のキャサリン・ヘプバーンが演じる大胆不敵で傲慢(ごうまん)なキャラクターからイメージを広げた。イニシャルのレタリングが入った白いコートやシアリングのブルゾン、シャギーファーのコートなどウィンターホワイトがキーカラー。バレリーナのプリントのシャツやシャツドレス、フェアアイルのセーターなどレトロな気分を添える。チェックのツイードジャケットや大柄チェックのニット、カーディガンに刻まれたハンドステッチもノスタルジックな印象。
■コーチ
コーチは得意のレザーを背景にしたカジュアルスタイルを揃えた。シアリングのブルゾンにプリントスカートでガーリーなイメージに。シアリングコートは刺繍やアブストラクトのヘムラインで素朴な雰囲気を加える。ボア襟のメルトンコートは身頃にたくさんのワッペンを飾り、キルティングパーカにはファーの襟とフラワープリントをのせる。スカジャンやスカジャンディテールのダウンジャケットなど、前回に続いて米国のカジュアルアイテムをベースに変化を作る。アクセサリーはファーを飾ったキャップやボリュームソールのスニーカー。
(写真=catwalking.com、ランディ・ブルック)