今年はエコバッグが多くの人々の必携品として一気に普及した。マイバッグとも呼ばれるエコバッグは通常、客が買い物に持参して繰り返して使う自分のバッグのことを指す。買い物ごとに提供されていたレジ袋の大量消費を抑制して環境負荷を減らすことが狙いだ。
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レジ袋有料化が契機
エコバッグ自体はかなり以前からあるが、関心が高まる契機となったのがレジ袋有料化だ。政府は19年6月に、20年4月から有料化することを発表、その後20年7月に実施が延期された。地方や一部のスーパーでは有料化が具体化される前から取り組む事例もあった。
政府が有料化を表明してからは、スーパーのほとんどが前倒しで有料化に踏み切ったこともあってエコバッグが広がり始めた。ただエコバッグを所有する人の数が一気に増えたのはコンビニエンスストアがレジ袋を有料化した7月からだ。様々な調査でも買い物のたびにレジ袋を購入する人は圧倒的に少なく、利用頻度の高いコンビニ利用者はエコバッグを持つようになった。当初はレジ袋を持ち歩いて繰り返し使う人も多かったが、最近ではエコバッグを使う人に比べるとかなり少なくなった。
エコバッグが普及するにつれ、そのバリエーションが広がってきた。当初はエコバッグといえば、100円ショップなどの日用雑貨店やバラエティーショップ、スーパーなどのレジ回りが販売場所として想定されたが、その後、多様な店舗で販売されるようになり、百貨店でも服飾雑貨売り場で扱われるようになった。エコバッグ専門店まで登場したほどだ。
新しい商品領域
商品も高機能、高単価のものが増えており、リュック型やツーウェー型、撥水(はっすい)、抗菌・抗ウイルス加工、保冷機能、畳みやすい形状記憶タイプなど多種多様になってきた。当初はレジ袋の延長線上の簡素なものが多かったが、より上質なものが増えている。また、エコバッグの普及でパッカブルバッグも注目され、エコバッグにも使える携帯バッグとして企画が増えている。
最初は女性の需要が先行したが、今では男性の需要も大きくなっており、現在では1人で複数持つことが一般的になっている。有料化したことでエコバッグが広がったが、もともと持ち歩いているメインのバッグの形状については変化は見当たらない。やはり買い物袋という機能は依然として求められており、メインのバッグを買い物にも対応させるのではなく、エコバッグという商品領域が別に形成された格好だ。
そのため当面はエコバッグは安定した需要を維持し、上質化が進んでいくと見られる。レジ袋は有料化前は年間約300億枚が消費されていたというが、エコバッグもすでに1億枚を超える販売量になっているはずだ。
今年から来年にかけてファッションバッグメーカーもエコバッグやエコバッグを意識した企画に取り組む動きが広がっている。革を部分使いしたものやエコバッグをチャームにしたものなどファッション企画に組み入れられる傾向が強まっている。
(おわり)
(繊研新聞本紙20年12月28日付)