「花も実も根の力」 服の価値伝える俳優・モデル谷裕介

2019/01/21 06:26 更新


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 大学生の時に「ミス・ユニバース」の男性版「ミスタージャパン」の石川県代表に選ばれた谷裕介さん。その後、井川遥さんも所属する事務所、FMGに属して芸能活動に勤しむ一方、ファッションプランナーとして洋服に対するリテラシーを高める活動に手を広げようとしている。大学院生時代の研究のためにバングラデシュに出向いた経験が背景にある。出身である北陸は繊維の産地でもあり、「産地と消費者を結ぶ活動を通じて、服育にも力を入れられたら」と話す。

(永松浩介)

社会考えるきっかけ

 在学していた日本大学の生物資源科学部(農学部)では、日本人の豊かさについて学んでいた。当時はファストファッションが隆盛だったが、「銀座のある店で『1900円だから買おう』という若い女性の声が耳に残った。『だから』と『でも』は大きな違い」。自分が好きなファッションが単純に換金価値のレベルに置き換えられることに合点がいかなかった。

 自身のお気に入りのアメリカブランドの古着がバングラデシュ産だったことも手伝って生産地に興味がわき、院生の時に実態調査のためバングラデシュに飛んでひと月を過ごした。

 訪れた縫製工場の労働環境は劣悪というほどではないにせよ、お世辞にも良くはなかった。床に座って作業する縫い子、布団が敷いてあるだけで保育士もいない託児所。当然ながら先進国のそれとは大きな違いだった。

 先進国の消費者にとっては捨ててもいいと考えてしまうような廉価の製品を、物質的に恵まれないバングラデシュのような国の人たちが日々製造していることに彼我の差を痛感した。「服が好きなら、もっと服のことを考えてほしい。食べ物のことを気にするように」

 中高生向けにファッションから社会を考える機会を提供したいという。「自分たちが身に着けている服の生産から物流までのプロセスを学ぶことで、自分の生活の一部であるファッションがいかに多くの人によって成立しているかを知ってもらいたい。そこから社会問題に目を向けるきっかけになれば」と話す。

 エシカル(倫理的)やフェアトレードの商品の購入は海外の貧困問題解決の一助になるが、谷さんの関心は貧困問題にとどまらない。理想である「顔がみえる服」を支える国内産地にも向けられる。先頃就任した「いしかわ観光特使」の立場でできることを模索している。

ファッションプランナーの谷さん

花も実も根から

 農学部出身だけに、「花も実も根の力から」というのが信条。根の部分が製造にあたり、「ここを大事にしないと花も咲かないし、実もつかない」。製造ストーリーを記した小さなブックをつけたり、長いタグに製造に関わった人やチームの名を記したり、製造現場に関心を持たせるアイデアはあるという。「製品そのものはモノだが、コト要素を加えることで価値をアップデートできるはず」

 一方で、靴磨きの資格も取得した。靴クリームを買いに行った先で、靴クリーム大手のコロンブスの営業マンに偶然会ったのがきっかけだ。千葉・松戸の工場に出向き、研修を経てコロンブスの社内資格である「シューシャイニスト」を取った。「購入した後も大事にケアし、長く愛用するのは、大量消費の真逆。サステイナブル(持続可能)の考え方にもつながる」

 昨年6月にはメンズのピッティ・イマージネ・ウオモ(イタリア)の時期に合わせてミラノの路上で靴磨きをした。無料で実施したため、かえって訝(いぶか)る人も多かったが、「最初のお客はアフリカ移民。靴や家族の話ができたりして有意義だった」という。ヨーロッパの人が口にする「いい靴は、いい人に出会える」を地でいく体験だった。

 発展途上国でも生計を立てる手段として靴磨きの可能性を感じており、現在、JICA(国際協力機構)とも話をしている。「JICAに関連させて靴磨きの技術や物資を提供できるのではないか」。

 芸能活動は始めたばかり。「最初は有名になってからと思いましたが、今はやれることから始めようと思っています」

昨年6月にミラノの路上で行った靴磨きの様子

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