ワコールは30日、東急プラザ表参道原宿に、新しい接客スタイルを提供する次世代型インナーウェアショップ「3Dスマート&トライ」初の常設店をオープンした。売り場面積は108平方メートル。
(壁田知佳子)
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5秒間で約150万ポイントを計測する3Dボディースキャナーを3台と、接客AI(人工知能)を搭載したタブレットを置き、ビューティーアドバイザー(BA)を介さずに自分に合うブラジャー選びができる。
一方でカウンセリングルームも二つ設け、要望に応じてBAのカウンセリングも受けられる。商品はワコールブランドとウイングブランド、直営店ブランドの幅広いテイストや対象年齢のブラジャーを中心に約150品番を揃える。その場でも購入できるが、在庫がない場合はEC経由や配送、店舗受け取りなど購入スタイルも選択できる。
3Dボディースキャナーは、全身のサイズ計測のほか、胴体断面の形状、バストの容量、バストのバージス(底面の幅)、バストの左右間の距離など体形の特徴も判定する。
接客AIはこの体形データと、各人の下着選びの悩みや好みのデザイン、シルエットに応じて、お薦め商品を提案する。計測やお薦め商品の判定は、ワコール人間科学研究所による女性の体形データや、BAの接客ノウハウなど、ワコールが蓄積してきたデータを活用している。
今秋には3Dスマート&トライを導入する2号店ができる予定。3Dボディースキャナーは22年3月末までに、直営店や百貨店などに100台を導入する計画だ。グループの海外拠点での活用も検討している。
4月19日~5月12日に表参道ヒルズで開いた期間限定店では、988人の女性が3Dスマート&トライを体験した。
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—消費者に向き合う姿勢を具現化
伊東知康社長
1号店を東急プラザ表参道原宿に出したのは、ヤング層、サイズ測定やカウンセリングを受けたことの無い顧客など、これまでワコールが十分に取り込めていなかった消費者が多い立地と判断したからです。
表参道ヒルズの期間限定店などでは、意外なことも分かりました。セルフで計測した顧客の多くが、終了後にBAとの相談を希望したのです。デジタル化が進む半面、逆に「誰かと話をしたくなる」というニーズも結構多いのではないでしょうか。
1号店に限らず、今後展開していくショップは、セルフとカウンセリングを柔軟に組み合わせ、多様なニーズに対応していきます。デジタル化は大きな武器ですが、あくまでツ―ルであり、アナログ的な要素を見逃してはいけません。
事実、接客AIに搭載したリコメンデーションなどの内容は、現場のBAの長年の接客ノウハウ、人間科学研究所などの蓄積があって初めて可能になったわけです。
何度も言ってきましたが、当社のEC売上高はまだ12%程度。オムニチャネル戦略は、EC売上高を伸ばすことが目的なのではなく、自社の強みを生かしながら3000を超えるリアル店舗を活性化していくのが主眼です。
3Dスマート&トライは、モノからコト、さらにワコールグループが消費者に向き合う姿勢を発信していく拠点となります。個々の取引条件などの違いはありますが、これから様々な業態の流通と話し込みを進めていく考えです。
アウター関連の企業からも関心が寄せられています。データをさらに蓄積していけば、サイズ展開に関するニュービジネスが生まれる可能性もあります。
社内的なことですが、BAの働きがいの向上、接客最優先という働き方改革にもつながるでしょう。
今後、来店客の声、データを蓄積していくと同時に、ショップの中身をさらに改善しながら進化させていきますが、消費者にとっての分かりやすさ、使いやすさを何よりも重視していきます。