■海賊版抑止のために
「バーチャルマーケット(Vケット)4」企画者の動く城のフィオさんによれば、19年からVR(仮想現実)上で衣服データの販売が活発になってきた。IP(知的財産)管理の観点からデータの権利保護が望まれるが、VR上で使われるデータは、法整備が追いついていない。装いに個性を出すためのデータ改変を許容しながら、企業各社が先手で正規品を投入し、ガイドラインを示すことが重要だ。
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Vケット4では、東京駅など実在の建築物からガンダムといった架空キャラクターまで、有名なIPが集まった。主催のHIKKYは「VR上で初めての規模」とし、「版権者がVRに興味を持った証左」と歓迎する。
中でも注目すべき動向に、ゲームやアニメの制作企業による人気キャラクターのアバター販売を挙げる。「キャラクターの人格を売る」ことであり、画期的な取り組みだ。
背景には、海賊版データの抑止がある。第三者が市販のゲームデータから3DCGモデルを抽出し、アバターとして使うことは技術的に可能だ。さらに、データは「原価をかけずに無限にコピーを作ることができてしまう」(動く城のフィオさん)ので、大量の不正販売のリスクがある。
■改変で個性楽しむ
VRに関するデータを保護する法整備は進んでいない。舟越靖HIKKY代表は、「海賊版が作られる前に企業公式で提供したほうが良い」と提言する。「盗用を技術的に防止する必要はあるが、価値が認められれば、正規品が市場で勝てる」との見方だ。
既存キャラクターのアバターの量産というと画一的なイメージかもしれないが、VRファッションでは、アバターの肌や髪、服の色形を〝改変〟して、自分なりのカスタマイズを楽しむ。
舟越代表は、「今後、アバターや衣服データの改変禁止ルールは無くなり、改変可能を大前提としたガイドライン運用が主流になる」と予測する。
ガイドラインの設定に使えるひな形に「ユニバーチャルライセンス」がある。有志の日本のクリエイターが作成した、外国語にも対応予定のVR用データの利用規約テンプレートだ。HIKKYは事務業務に関わっており、「企業にも活用してほしい」と評価する。
(繊研新聞本紙20年6月3日付)