素材開発の潮流に変化が見える。かつては絹のような質感、上品な光沢など発色の美しさやドレープ性、光沢、色の深さなどのファッション性が素材の付加価値であり、開発の主眼はそこに置かれていた。
ところが近年、素材の切り口としてウェルネスを掲げる企業が目立つ。鉱物を練り込んだ特許素材で疲労回復などが期待できるリカバリーウェアが、アスリートから一般消費者へと支持を広げた。保湿成分を配合した素材は、ウェルビーイングをコンセプトとする美容向け製品に活用され市場での存在感を増している。
背景には、モノより体験、見た目より心身の状態を重視する消費者の価値観の変化がある。ファッションが競うのはデザインだけではない。着ることで得られる心地よさや健康促進と実感を得やすい機能が選ばれる理由になりつつある。
素材の開発は、装うためのものから、整えるためのものへ。この転換は、繊維産業にとって新たな成長軸となり得る。
(民)
