企業努力。この言葉はポジティブな意味合いで使われることが多いと感じるし、自分もポジティブな捉え方をしてきたように思う。例えばテレビ番組などで商品やサービスの特徴を伝える時、「なぜこんなにお手頃価格なのか」と問う。企業側は「企業努力です」と笑顔で答える。そんなやりとりを数多く見てきたが、これまで違和感がなかった。
ところがこの言葉の裏側を想像してみると、必ずしもポジティブな努力ばかりではないと気付く。利益を削り、賃金を削り、時間を削り――。無理をして働いてきた経営者や従業員もいたことだろう。こうした問題点を〝企業努力〟という聞こえの良い言葉が見事に打ち消してきたような気がする。
企業である以上、従業員にやみくもな努力をさせないよう適正な管理が必要だろうし、無理をさせたとしてもそれ相応の対価で報いなければ、そんな企業努力は長続きしない。〝やりがい搾取〟と指摘されるかもしれない。コンプライアンス(法令順守)の観点で問題になるケースもあるだろう。
企業努力という言葉が出てきた時にそこで思考停止せず、まずは考えを巡らせることが重要だと思った。さらに、どんな努力なのかを知れば、その企業の本質が見えてくるはずだ。
(嗣)