ある縫製工場は縫製工員一人ひとりに名刺を作り、渡している。名刺には職種である「ミシンオペレーター」と本人の名前などが印刷されている。
基本的には一日中ミシンと向き合って、物作りに携わるミシンオペレーターは、例えば営業やデザイナーなどと比べて社外の人と会う機会は決して多くはない。そうすると果たして名刺が必要か、経費がもったいないのでは、と考える人もいるかもしれない。しかし、記者は「必要」だと思う。
名刺は社会に出て最も手軽で身近な自己紹介ツールの一つ。社会人は仕事の時だけでなく、学生時代の友人との食事会や結婚式、同窓会といった場でも名刺交換する。故郷に帰省した時には地元の友達、家族や身内にも渡す。新入社員ならなおさらだ。
以前、知り合いが集まって名刺交換をするなか、1人していない知人がいた。当時テレホンオペレーターとして働いていたが、会社から名刺を与えられていなかった、というのを後から風のうわさで聞いた
前述の工場の若手社員が「もう名刺が無くなりそうです」と言っていたとその会社の経営者が笑顔で教えてくれた。名刺を渡すというちょっとしたことが、社員のモチベーションを高め、会社へのロイヤルティー向上にもつながってくるのだろう。
(森)