《視点》大変の重み

2023/03/08 06:23 更新


 コロナ禍で商業施設の営業自粛が相次いだ中でも業績を伸ばした婦人服専門店の代表に好調要因を聞いた。その企業は百貨店・SC中心に出店しているが、「厳しい環境だからこそ守りに入らず、攻めたからだ」との答えが返ってきた。周りが大変だと頭を抱えていたさなか、ピンチをチャンスとして自社の変革に取り組み、周りで閉店が相次いでいても出店を重ねてきたと言い、それが奏功している。

 物事が大きく変わるから大変なのだ。環境が大きく変われば、自分も大きく変わらなければ淘汰(とうた)の波に飲み込まれてしまう。だが、「大変」を口にする人すべてが変化を感じ取っているとは限らない。愚痴のように、ただ厳しい環境を強調するだけに使われることの方が多い気がする。

 変化対応が大事だと言うが、変化に気付く感性がなければ対応などできず、知らぬ間に変わっていたでは、遅きに失してしまう。90年代に主要先進国の中で一人当たり国民所得がトップだった日本は現在、下位に甘んじる。社会全体の感性のよどみを反省点として捉えるべきだろう。

(樹)



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