《視点》わずかな明かりでも

2022/10/05 06:23 更新


 原材料費や物流費の上昇、円安による値上げの知らせをよく見聞きするようになった。「大変心苦しいのですが…」との案内がなじみのレストランでも掲示され、ここもいよいよかと思ったのもつい先日の話だ。

 この間、ある展示会でこんな話で盛り上がった。「最近の日本のファッションシーンが面白くない」。街に出れば、若者たちはみんな同じ服を着ている。この1、2年はマーメイドスカートやシアーアイテム。こっちを見ても、あっちを見ても似た格好で「どうしちゃったのかなぁ」と取材先の方は憂えていた。

 コロナ禍でおしゃれへの意欲が下がるなか、それに拍車をかける経済のマイナス要因。限られた可処分所得で服を買ってもらうためには、客がときめく商品企画が必要だが、作り手や売り手を取り巻く環境は厳しさを増し、作りたい商品を思うように作れない葛藤は続く。八方ふさがりだ。

 ファッションの高揚感は人々の心や暮らしを潤す。そのメッセージをコロナ禍で鬱屈(うっくつ)した業界に、未来を信じて自分なりに発信してきたつもりだ。しかし、そうも言っていられない状況になってきた。けれども、ここで止めるわけにもいかない。理想を語るようだけれど、業界の方々にこれからも寄り添い、わずかな明かりでも照らすことができればと思う。

(麻)



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