子供の夏休みが終わり、2学期が始まった。夏休みの宿題の定番で、子供が苦戦する課題の一つが読書感想文。我が家でも着手が遅れがちだった子供と一緒に、久々に吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を読んでみた。
大学時代に目から鱗(うろこ)が落ちる思いがした本だが、社会に出てから読んでも新鮮で、哲学や経済学、歴史観など、物の見方について分かりやすく書いてあって感心した。親友が上級生から理不尽にいじめられた時の主人公の葛藤、親友を守れなかった後悔、その後の対応など、子供にとっても考えさせられる身近な話が多いようで、娘も「面白い」と夢中になって読んでいた。
有名な著者だが、改めて経歴を見て驚いた。1899年(明治32年)生まれで、この本を書いたのは日中戦争中、第2次世界大戦が始まる2年前。言論や思想統制が厳しい時代に、人類の進歩の役に立つ生き方や人間らしい関係作り、自分で決定することの重要さを説いている点にびっくりした。
岩波書店で少年文庫や新書の創設に携わり、戦後の45年に雑誌『世界』を創刊した初代編集長で、81年に亡くなった同時代の編集者と知って親近感を覚えつつ、ジャーナリストとしての生き方を示され、背筋が伸びる思いがした。
(陽)