ファッションビジネス企業を取材していると、しばしばあるのがリストラクチャリング(事業の再構築)。事業の廃止や部課の統廃合、ブランドの縮小撤退など様々で、時には希望退職を募って、人員を削減するケースもある。
以前あるアパレル企業のリストラにより、退職を余儀なくされた人は、「次の会社を紹介されたが、ファッションとは全く違う飲食企業だった」と憤っていた。結局、その元社員は紹介された会社ではなくファッション業界の中で自ら就職活動し、転職した。
別のアパレル企業で事業撤退の判断をした企業の経営者に話を聞いたときは、「本当にぎりぎりのタイミングだった」と明かした。アパレル不振で服が売れず、借金と在庫が見る見る膨れ上がっていった。毎年赤字で、資産である土地・建物を売っても、借金と相殺できるか難しかった。数十人いた社員はほとんどが退職となった。
事業を継続する方法がなかったのか、今いる人員で再構築できなかったのか――。誰にも分からない。ただ間違いないのはリストラされる側・する側どちらも心に深い傷を負っているということだろう。コロナ禍で今この瞬間に難しい判断を迫られている経営者や社員がいる。その気持ちに寄り添った報道が我々業界専門紙の使命だと思う。
(森)