素材メーカーのトップにコストアップにどう対処するか問うと、「それ以上にコロナ禍の影響でサプライチェーンが混乱し、材料の調達がスムーズにいかないことのほうが深刻」との返答が目立った。「材料が入らなくて工場を止めないといけないかもしれない」というメーカーもあった。「中国での環境規制が厳しくなり、調達できていた材料が生産中止になるケースもいくつか出ている」そうだ。
こうした問題に対し、ある企業は在庫管理の方針を転換。これまではジャストインを基本に「〝在庫ゼロ〟レベルを現場に求めてきた」が、「売れる物はサプライチェーンが寸断されても十分に生産対応できる適正な在庫は持つ」ことにした。別の企業は「コストアップに対応した価格転嫁のお願いを受け入れてもらえるなら、我々はしっかりと材料を調達し、きっちりとした品質、納期でお客様へ供給責任を果たす」と強調。「これをやらなければ、日本が世界のなかで調達負けする。日本経済がどんどん失速する」とも指摘した。
値上げに慎重なアパレルメーカーや小売業は少なくないし、その考え方は理解できる。しかし、物作りを続けていくためにも、川上企業が直面している窮状に耳を傾け、この問題に一緒に向き合って最適解を導き出そうとする姿勢が必要ではないだろうか。
(嗣)