この数年、ウールのTシャツを春夏に愛用している。ウールは吸放湿性、消臭性など多機能を備え、アウトドアブランドのインナーとしては定番だし、「夏にもいいよ」と聞いていたので、試しにTシャツを購入した。そのTシャツに使われている糸は、ウールの冬服でイメージされるような毛羽立った紡毛の糸ではもちろんなくて、細い強撚の糸が使われている。着ると、ドライタッチで、やや光沢があって適度な品もあり、とても満足している。軽い運動の時にもいい。
ウールに携わる業界人からは「とてもエコな素材なんです」とアピールされることが多い。天然繊維で生分解性があり、羊毛は繰り返し採取可能などといった特徴があってのこと。「今の時代に合ってますね」と感心する一方、胸のうちは「エコだから買ったわけじゃないですよ」。夏にも適しているという、自分が知らなかったウールの一面に魅力を感じ、愛着を持った。
エコは今の時代、重要なポイントだが、それ以前に本来の使用価値であるはずの特徴があまり知られていないことがウールのファンの1人としてもどかしい。コロナ禍でウールの主用途であるビジネススーツの需要が激減している中で、その苦戦を少しでも補うためにも春夏シーズンの日常着としての需要開拓は課題だろう。ウールの需要促進に期待したい。
(嗣)