ファッション業界に限らないのだろうが、えてして経営者は新し物好きだ。OMO(オンラインとオフラインの融合)だ、DX(デジタルトランスフォーメーション)だ、と初めて聞いた言葉をさも新しいおもちゃを手にしたかのようにしてもてあそぶ。メディアも乗っかって報道するから、それを見聞きした別の経営者も口にし、言葉だけが拡大再生産されていく。
トップがそんなワードの本質を理解しないまま、現場に指令を下ろすから、担当になった人間も懸命に〝お化粧〟をして格好をつける。でも、本質を捉えていないからすぐに底の浅さがみえてしまう。パブリックな会社は株主へのアピールもあるのだろうが担当者はたまったもんじゃない。
新しい概念やビジネスモデルに取り組もうとすれば、組織など大幅な仕組みの変更が余儀無くされる。でも、多くの企業はそのまま続けようとするから効果は限定的だ。
見切りで「えいや」と始めたり、「とりあえず何か考えといて」と現場に振る前に、「本当に取り組む価値のあることなのか」「何のためにやるのか」を一度考えた方がいい。真面目に思いを巡らせると、その前にやるべきことが山積していることに気付くはずだ。新しい概念を提示した当のフロンティア経営者たちはそんな生半可な構えで始めたのではない。
(介)