《視点》繊維の知識

2019/09/12 06:23 更新


 登山などの極限環境ではウールの肌着がしばしば使われる。ウールの吸放湿性や撥水(はっすい)性が汗冷えを防ぎ、衣服内を適切な温度に保つという。先日トーア紡コーポレーションと大阪大学が北極冒険向けウールのスマートウェアを開発したが、1カ月間の連続使用でも臭くならなかった。

 自分自身、学生時代に学生服がそれほど臭くならなかったことに特に疑問も抱かなかったが、それがウール特有の機能によるものだと知ったのはこの仕事を始めてからだ。業界関係者にとって、ウールも綿も吸湿発熱性があるのは当たり前の知識かもしれないが、消費者にとってはそうではない。天然繊維が勝手に発熱するなど、理科に詳しい人ならともかく、知る機会はなかなかない。ましてや例えばウールに撥水性や抗菌防臭性があるなんて、思いもつかないだろう。

 合繊、天然繊維を含め、繊維にはそれぞれ特徴的な機能があり、知れば知るほど面白い部分もある。消費者が繊維について知る機会をもっと増やせば、業界に対する関心も高まるはずだ。

(騎)



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