高付加価値で市場規模の小さい素材が、投機の対象となり、実需以外からの引き合いを受けて相場が高騰するケースが増えてきた。昨年5月に高騰した高級獣毛のカシミヤがその代表例だ。羽毛の最大産地である中国で環境規制によって飼育場が閉鎖され、供給が不安視されたケースも同様と言える。
リーマンショック後の大幅な金融緩和による投機資金の流入ほどではないものの、投機資金に弱い素材市場の現状を浮き彫りにしている。カシミヤは、価格高騰前の1キロ当たり8000円が1万4000円前後にまで上昇したという。
このため、秋冬向け生産のための素材調達時期と重なり、関係業界に大きな影響を与えた。カシミヤは現在も高値で推移しており、製品価格上昇による消費への影響が懸念される。
需給バランスの変化による価格の上下は避けられない。しかし、実需とは無関係の投機筋の影響を可能な限り回避するためには、品質と価値に見合った価格モデルの浸透とそれに基づく取引の拡大が業界の今後の課題となりそうだ。
(浅)