《めてみみ》新しいプレゼンテーションの形

2025/06/26 06:24 更新NEW!


 6月半ば、「MASUを愛する皆さんへ」と題したインスタグラムの投稿があった。「コレクションの撮影現場をみんなに見てもらいたい。金曜日の夜、新木場で待ってるね」と、デザイナーの後藤愼平自らが呼びかけた。不特定多数に向けて出欠も取らずに声をかける企画だ。

 撮影当日、早めに会場を訪れると、いわゆるファッションイベントとは様子が違った。ショーの前の緊張感はない。普段は公開しない部分をのぞいてみて、といったオープンなノリで迎えられた。

 一般客が来場する前にデザイナーに声をかけると「いったい何人来るか見当もつかない。50人くらいだったりして」と笑った。何が起こるか分からない状況を楽しんでいるようだった。

 会場は駅から歩いて15分。倉庫街におしゃれな若者が次第に集まり、気付いたら500人を超えていた。大きなスタジオがぎゅうぎゅうだ。熱気の中、デザイナーがモデルにポーズや表情を指示し、フォトグラファーやヘアメイクが立ち回る。撮影が進む様子を、若者たちはワクワクした表情で見つめていた。

 ファッションの表層だけでなく、不確定要素を含んだ楽しい部分を感じてほしい狙いがあったという。目的を明確にし、シンプルにアプローチすることで心をつかむ。服を見せるだけではないプレゼンテーションの形に、表現は無限だと実感した。



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