「40年の長きにわたるご愛顧、誠にありがとうございました」というような貼り紙と共に、ひっそりと店を閉じる飲食店がここ数年増えている。喫茶店にトンカツ屋、ランチが人気だった小料理店など。広く名をはせるほどでもないが、周辺の勤め人や住民から長く愛されてきただけに「さみしいね」と惜しむ声をよく聞く。食だけでなく、その店がまとっていた時代感というか、文化のようなものが一緒に消えてしまうのも残念であり、跡にファストフード店ができたりすると、そのがっかり感はひとしおだ。
30~40年前というと、経済に少し余裕が出て、食への関心が高まり、外食産業が一気に花開いたころだったのか。当時開業したオーナーが今、年齢的に体力の限界で後継者を探すのも難しかったのだろうと想像がつく。
繊維・ファッション業界でも、近年、事業継承を課題とする企業が増えている。次の世代に事業をつなぐのは、企業ごとに状況や事情も異なるため、課題も多様。創業の大変さとはまた違った複雑な問題がある。無くなってしまってから「残念だった」との思いが残らぬよう、私たちも、そのヒントとなるような情報を探し、発信していかねばと思う。(維)