「ダイバーシティー(人材の多様性)に富んだ経営を推進する」と経営者はいうが、困っている現場もあるようだ。最近は減ったかもしれないが、「女性の活躍を促すこと=ダイバーシティー」と理解しているケースもいまだにあると聞く。経営学が専門のある大学教授は「日本には『女性の管理職比率を3割にする』ことがダイバーシティーだと勘違いしている人が少なくない」と指摘した。
昨年、その教授のもとに名だたる大企業のダイバーシティー推進室長が、毎週のように訪ねてきた。そこで、「御社は何のためにダイバーシティーを推進するのか問うと、皆さんは口を揃えて『さあ、わかりません』と答えた」という。
ダイバーシティーの本当の目的は、多様な人を集めることで蓄積された多様な知識を生かして組織を活性化すること。既存の知識と新しい知識の掛け合わせは、イノベーションを生む源泉になり得る。組織の展望を開くポジティブな意味を持つ言葉だけに、手段が目的化しているのはもったいない。
(嗣)