「少量であってもより付加価値の高い商品の生産を請け負う。量があっても安価な商品の発注には応じない」。これがここにきてのアパレルOEM(相手先ブランドによる生産)企業の共通認識になってきた。
背景には、量販型商品の利幅の薄さ、委託元企業の直貿(海外メーカーとの直接取引)の拡大、それに越境EC進出による販売価格の下落がある。「10年前の常識である〝より安く〟を追求すると、もはやそのOEM受注は成り立たない」という。
ある大手OEM企業は「昨年からの寒波によって今秋冬はコートや厚手のジャケット類などが売れている。しかしその中身を見ると、デザインや素材、意匠にこだわったものばかり。黒、グレー、ネイビーのベーシックなチェスターコートが意外に売れていない」と指摘する。
「寒くなって防寒着へのニーズは高まったが、そこには必ず、おしゃれ、他と違うものという要素が入っている。だから『ベーシックで量を』は要らない」というわけだ。「量から質へ」「付加価値を高めるデザイン・ディテールや素材の提案」など、OEMには新たな考え方が必要になってきた。(浅)