《視点》幻の総合商社

2017/09/14 04:00 更新


 今年7月、神戸・元町の港近くに、あるモニュメントが建立された。かつて同地に本店を置いた鈴木商店の痕跡を記したもので、OBや同社を源流とする企業が協賛する鈴木商店記念館が神戸市に寄贈した。鈴木商店は洋糖商として創業し、女主人の鈴木よねと大番頭の金子直吉が次々と事業を起こしていった。

 製糖、ハッカ、鉄鋼、造船、繊維など幅広い事業を手掛け、のちに「総合商社の源流」とも言われる実績を築いた。急成長した鈴木商店は今からちょうど100年前の1917年(大正6年)に売上高日本一となったが、その額は当時の日本のGNP(国民総生産)の1割を占めたという。

 同社が輸出で稼いだ巨額の外貨によって、日本は開国以来初めて純債権国になった。しかし、第1次世界大戦後の世界不況のあおりを受け、1927年(昭和2年)に鈴木商店は経営破綻(はたん)を迎える。

 90年前に消えてしまった〝幻の総合商社〟だが、帝人、双日、神戸製鋼所、サッポロビールなど鈴木商店をルーツとする多くの企業に、その跡が刻まれている。

(恵)



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