《視点》実需対応

2017/09/06 04:00 更新


 21日間連続で雨が降った今年の東京。猛暑予想から一転して気温も低く、夏が早く終わったことで横編みなど秋物の売れ行きが好調だという。本紙報道でもあったが、気温が寒いから売れたというのは、消費者がそれほどトレンドを意識しておらず、気温に合わせて今着たいものを買う「実需買い」が進んでいることを示している。

 最近ではAI(人工知能)を活用して、季節や天候に合わせて需要を予測する取り組みも始まっているが、物作りには素材や副資材を調達したり、生産のためのリードタイムが必要。需要を予測できてもすぐにそれに合わせた商品を供給できなければ意味がない。ただ、産地など既存の生産現場を回るとそのスピード感、短納期対応はもはや限界に近い。

 そうした中で、実需買いが進むほど、在庫機能がより必要になってくるのではないだろうかと感じる。生地卸や商社などが持つ在庫機能は、安定生産と適時供給を実現するための調整弁。もちろんリスクはあるものの、実需対応が鍵になるなか、在庫の充実が明暗を分けるかもしれない。(騎)



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