《視点》矛盾へのなれ

2017/08/22 04:00 更新


 日本のファッションビジネスを支えてきた大手企業の業績不振や業界の構造不況に対して、業界外からも注目が高まり、厳しい目が向けられるようになっている。書籍『誰がアパレルを殺すのか』(杉原淳一、染原睦美著)のヒットや、有力百貨店のトップ交代などがきっかけとなって、今夏は「ニューズピックス」「読売新聞」などの一般経済メディアや新聞も、ファッション業界の長年の矛盾を指摘する連載を組んで話題となっている。

 問題点として取り上げられている百貨店の消化仕入れ、メーカーの商社依存といった要素は、業界に生きる我々は当然知っていたことだ。しかし、ファッション〝ムラ〟という狭い世界の習慣に慣れすぎて、矛盾を矛盾と感じず、受け流してしまう感覚の麻痺(まひ)があったことは否めない。業界外からの指摘に触れることで、感覚の鈍化を強く自覚し、同時に恥じた。

 日本のファッションビジネスは、総体として「変革か死か」という岐路にまできている。もちろん、いつの時代でも売れるブランドはあるが、業界全体として新しいモデルを生み続けるような存在からは遠く離れつつある。受け流してきた矛盾を今変えなければもう後が無い。そのために何ができるかと、今まで以上に考える夏だ。

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