20世紀の経済学者ジョン・メイナード・ケインズが株式市場の本質を表す例えとして「美人コンテスト」を持ち出している。
コンテストでは投票者に対して「美人だと思う人に投票して下さい」と呼びかける。ただし、「優勝した女性に投票した方には、賞金を差し上げます」と条件を付けることでコンテストの様相が大きく変わる。自分が好きなタイプではなく、多くの投票者が誰を美人だと思うかを予想することになる。株式市場ではプロの投機家たちがしのぎを削り〝平均的な投票行動〟を予測して〝賞金〟を得ようと躍起になる。
これは21世紀に入り多くの投資家が〝投票〟した、サブプライムローンの蹉跌(さてつ)の背景でもある。AI(人工知能)によるビッグデータ解析が進む今日において、美人コンテストは即座に結論が出る。
ファッション業界でも、〝美人コンテスト〟が進む。天候やトレンド予想などのデータを使った需要予測によるMDの最適化で売れ筋をつかむ動きが進展している。しかし、個々の企業の合理的な行動が、業界全体として同質化を加速させる「合成の誤謬(ごびゅう)」を生む懸念もある。美人コンテストは魅力的なのか、疑いの目を向けることが必要だ。(民)