英国EU離脱、現地業界も驚きと戸惑い

2016/06/28 12:15 更新


 英国のEU(欧州連合)離脱が決まり、現地でも驚きと戸惑いが広がっている。国際ビジネスが基本のファッション業界関係者は残留派が大半を占め、英国ファッション協会(BFC)が投票9日前に発表した調査結果では、回答のあった290人のデザイナーのうち90%が残留を支持し、離脱は4・3%、検討中が2・4%だった。(ロンドン=若月美奈通信員、パリ=ライター・益井祐)


 10日から行われたロンドン・メンズコレクションでは「シブリング」や「Eトウツ」のショーで、フィナーレにデザイナーが残留を支持する「IN」と書かれたTシャツを着て登場。シブリングのデザイナーの1人、コゼット・マクリーリーは「すごくショックを受けている。素材から生産までEUのメーカーと物作りをしている。今後のファッション界を担う学生たちも互いに行き来して経験を積んでいるが、今後ビザが必要になればそれも難しくなる」と語る。

 BFCのキャロライン・ラッシュCEOは離脱発表直後に「デザイナーの多くが残留を支持しており、今日の結果が彼らに動揺と失望をもたらしたことは明らかだ。今後、政府に対してファッション産業の重要事項を伝えるとともに、デザイナーたちにEU離脱に向けて起こりうるビジネスへの影響を随時知らせる」との声明を発表。24日正午過ぎ(現地時間)に、BFCはデザイナーたちに向け、政府に対してファッション業界の懸念と課題をまとめた最初の意見書を9月に提出することなどを記したメールを配信した。

 パリでは24日から、新進ブランドを集めたBFC主催のメンズ合同展示会、ロンドンショールームズが始まった。参加デザイナーたちは予期せぬ結果に先行きが読めないとしながら、様々な不安材料をあげている。

 クレイグ・グリーンは「卸値を設定したばかりだが、ポンド下落でそれを維持できるかわからなくなった。受注書を作り直すべきか宙ぶらりんの状態だ。60%が英国製だが、素材は様々な国から買い付けている。イタリアに素材を発注する9月まで、実際のコストが見えない」と混乱を隠さない。

 リアム・ホッジスは「先が見えない怖さに包まれている。商品は20%が英国内で40%をポルトガル、40%をベトナムで生産しているが、ベトナムもドル建て。為替の変動によるコストアップは免れない」と嘆く。

 事前に懸念されていたEU諸国との輸出入における関税の発生だけでなく、ポンドの下落が英国ブランドビジネスに影響を及ぼすことになりそうだ。



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