東レのパシフィック資本参加 ニット加わり大きな力に

2017/07/07 04:28 更新


大矢光雄専務繊維事業本部長

 東レは香港の丸編み大手、パシフィック・テキスタイルズ・ホールディングス(互太紡織)への600億円近い資本参加を決めた。大矢光雄専務繊維事業本部長は「織物中心だったテキスタイル事業に、同規模のニットが加わる。現状では彼らがやっていないグローバルスポーツ向けなど、様々なシナジーが期待できる」と話す。今後、役員の派遣や連携について具体化する方針だ。

◆品質はトップ

 会長兼CEO(最高経営責任者)の尹惠來氏はタルニット出身で、97年のパシフィック設立以来、両社は取引関係にある。現在、大手SPA(製造小売業)向け機能インナーを中心に、糸売り、生地調達と売り買いの両方でビジネスがあり、東レはパシフィックの最大取引先。

 創業者の1人で筆頭株主の葉炳棪氏が高齢を理由に所有株の売却について東レに打診し、株式の28.03%、約590億円資本参加することで合意した。大矢専務は、「ニットの世界的なプレーヤーは限られるが、その中でパシフィックは品質、生産管理のレベルはトップ。仮に株式が流出すればこれが崩れる」と語る。サプライチェーンの維持・確保を第一義に、これをより強固にする狙いがある。

 出資比率3割弱ながら同社の繊維事業で過去にないほど巨額の投資となった点についても、「投資効果を精査し、妥当と判断している」。直近では営業利益率18%近くと高収益で、配当性向が高いことも踏まえた。

 役員の派遣は「重要と考えている」とし、必要な手続きを経て実施。持ち分法の適用対象でもあり、ガバナンスにも積極的に関与していく。また役員だけでなく、開発や営業の担当人員を送り込む考えで、常時あらゆるサポートを通じてシナジーを追求する。

◆新事業の構築

 今後の大きなテーマとするのが、東レグループとしての新しいニット事業の構築だ。東レは中国の東麗酒伊織染南通(TSD)、タイのラッキーテックス、マレーシアのペンファブリックなど多くのテキスタイル製造拠点を持つが、ほとんどが織物。グループ11社合わせて月4500万メートルの生産能力のうち、ニットは100万メートルしかない。これに対し、パシフィックは丸編みを主力に月4000万メートルで、「大きな戦力になる」。現状ではパシフィックが販売していない欧米のグローバルスポーツアパレルなど、客先の拡大が期待できるという。

 東レは今期から中期経営課題をスタート、繊維は売上高1兆1200億円を構想する。3カ年の設備投資額5000億円のうち、2割相当を繊維事業に向ける方針だが、今回の出資はこれとは別枠のM&A(企業の合併・買収)関連の予算から充て、今後も有望案件があれば出資やM&Aを検討していく。

(中村恵生)




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