16年はJR新宿駅新南口に「高感度な大人女性」を中心対象にした新施設「ニュウマン」を春に開業するなど、新たな事業拡大策を進めた。同時に、ショップとの取り組みによる「独自価値」向上策を促進、一定の成果を上げた。17年は「原点回帰」をキーワードに、「ショップとのコミュニティー作り」を一段と強める。
“変化を持たせることを積み上げてきた”
■フロアマスターを配置
――16年の市況を振り返ると。
厳しい一年でした。景気の浮揚感はありましたが、先行き不透明感が残り、消費全体の浮上には及びませんでした。特に、ファッションビジネス業界は従来の延長線上の取り組みが続き、マーケットに対する新しい提案が依然として不十分でした。若い女性を中心に消費者のニーズと購買チャネルが大きく変わっています。一人ひとりがTPOに合わせて、買い方や買う場所を変えている。そうした変化に対応し切れていません。
また、かねて指摘しているように、セールの早期化、値引き販売の常態化がブランドや商品の価値を棄損していることも市況低迷の大きな要因です。16年はこれが顕著でした。16年夏は6月初めからセールが始まったため、7月は7割引きなど本来以上の値引き率になってしまった。これがマーケットを一層冷え込ませてしまいました。
――その中でも、新しい仕掛けや独自の取り組みを積極化した企業は健闘している。
ニュウマンを除く全施設の売り上げは4~11月でほぼ前年並み。立川、横浜、町田店がやや苦戦していますが、それ以外の施設は健闘しています。各施設にフロアごとに配置しているフロアマスターを軸に、マーケットとお客のニーズは何なのかをショップとともに考え、商品政策から店頭ディスプレーまでいろいろな工夫をし、変化を持たせることを積み上げてきた成果です。特に、16年はフロアマスターのショップとの取り組みはかなり踏み込みました。
お客は「買い回り」ではなく、「見回り」をしています。見回れば見回るだけ、モノを見る目が肥え、厳しくなっています。お客のニーズはますます多様化、多重化しており、対応するためにはショップと一体となって魅力ある商品、館作りを一層追求していかなければなりません。16年は当社とショップとの「新しいコミュニティー作り」を重点に掲げました。「前進した」という手応えはあります。
“「原点回帰」が経営のキーワード”
■20年に横浜でも新提案
――ニュウマンの手応えは。
従来のルミネにはない新しいことに取り組んだので、数値面で言えば、初年度から結果が出るとは思っていません。少なくとも3~5年はかかると考えています。ただし、マーケットの中での商品と価格帯の同質化に対する新しい提案、「新宿から世界に発信する」という理念を出せたことについては手応えがあります。
今後、商品やその背景にある作り手の思いなどをもっと発信するなど、改善策を進めていきます。20年に横浜駅西口に開業するJR新ビルに出す施設も「新しい器に新しい価値を入れる」ため、ニュウマンで検討しています。新宿のノウハウを横浜に合わせながら、生かしていきます。
――17年度(18年3月期)は。
マーケットをしっかり捉え、ルミネのコアコンピタンスをより明確にし、独自価値と提案力を一層強めていきます。「原点回帰」が経営のキーワードです。そのために、ショップとのコミュニティーをさらに強化していきます。リニューアルも店舗の入れ替えよりも、既存店の精度を高めるためのブラッシュアップに力を入れます。
また、17年度中には海外出店をしたいと考えています。16年3月にシンガポールに設立した現地法人で、マーケット調査を進めています。