東急百貨店札幌店、開業50年を機に融合型へ 地域の再開発捉え利便性向上

2023/04/19 11:00 更新


4月6日、2階に改装オープンした「プードゥドゥ」

 札幌駅前の東急百貨店札幌店は、50周年を迎える今秋の完成を目指して大規模改装を行っている。駅エリアの変化の中で、地域の利便性を維持する役割を果たすとともに、全社で進める〝融合型リテーラー〟への転換を実現する。売り上げとともに客数を大幅に伸ばすことが見込まれており、新規客獲得の機ともする構えだ。

駅改修でエスタ閉館

 30年の新幹線延伸に向け、JR札幌駅の工事が進んでおり、商業施設も再開発される。新たな施設の建設に向けて22年9月、高架下などの商業施設のパセオが営業を終了したのに続き、今夏にそごう跡を活用した別棟のエスタが閉館することになっている。

 東急百貨店札幌店の改装はこうした状況を受けたもの。地下1階~地上10階の同店で、5、6階にエスタから移るビックカメラを導入、9階にはバンダイナムコのアミューズメントが入ることが決まっており、7階にはファッションの大型店が導入される予定。これにより18年に導入した8階のハンズと合わせて5~9階は大型テナントが並び、1~4階に集約されたレディス、メンズ、化粧品、雑貨などと地下1階の食料品を組み合わせる百貨店の枠にとらわれない融合型に切り替わることになる。

 9階にあった催事場はなくなるとはいえ、従来の8層分をまとめることになる1~4階では、従来からの顧客の支持を守るため、カテゴリーとしてはほぼ維持することを追求している。1~4階は2月から工事が始まっており、今月から順次売り場がオープンしている。4月24日に5~7階の、28日には9階の工事が始まる。

客数倍増を見込む

 10階には郵便局が移ってくることにもなっており、JR札幌駅の再開発に伴い、少なくともその完成までは地域に欠けることになるものを補うことになる。さらに再開発工事に伴って札幌駅南口への東側からのアプローチが制限され、同店は貴重なルートになることが想定されている。そのため改装の効果と合わせ、年商は22年度の1.5倍になることが想定されている。もともとインバウンド(訪日外国人)需要の比率が低くその面での影響は小さくとも、他の百貨店ではこの間活況を呈しているラグジュアリーブランドの押し上げがないことなどから、現在の売り上げはコロナ前と乖離(かいり)がある状況だが、それを一気に取り戻すことになる。

 さらに客数については倍増することが見込まれている。これまでは来店していなかった層、とりわけ若年層の来店が期待されている。同店は企業主導型保育園を備え、地域の顧客に支えられてきたが、結果として中心顧客層の年齢は60歳を超えるといった高齢化が進んでいた。集客力の高い大型専門店が入ることで、20、30年一気に若返ることが見込まれる。新たな客層の構成に応える食料品の修正も検討されている。

 札幌駅エリアでは駅の再開発のほかにも、大型商業施設の開発が見込まれている。東急百貨店札幌店では今の最善を追求、利便性の高い店を目指しながら今後に備えることにしている。



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