高級服のお直しの東京縫製(東京)が縫製スクール事業に乗り出した。個人・法人を問わず広く募り、すでに生徒が学んでいる。3コースあり、ベテラン職人が縫製現場で手取り足取り教える〝完全実践型〟が売り。技術者職人の採用につなげる狙いもある。
きっかけは業界全体の悩みである職人不足。同社も例外ではない。「せっかく(コストをかけて)教えても離職するケースが常にある」(河内愛社長)。それなら縫製に興味のある人に有料で教え、意識の高い人を数人でも採用できればと考えた。
昨年夏に告知したところ、個人、法人から問い合わせがあり試験運用を始めた。その後、サイトを新設、今年から広告も打っている。同業でも受け入れる。「技術が流出するのではとの不安はあるが、職人不足は共通の課題なので協力する」と河内社長。
「TOHO縫製スクール」は、初級(基礎、ベーシック縫製の2種)、中級(ビジネス)、高級(エキスパート)の3コース。ベーシックが1回1時間の6回コースで7万7000円(税込み)。10人ほどの熟練技術者が、平日の稼働中の現場で教える。「実際の仕事の雰囲気も体感できるので、求職者にもいいのでは」と言う。
閑散期のみの受け入れを考えたが、反応がいいため最繁忙期を除き通年で募集する。始まったばかりなので、初級、中級で学ぶ生徒が多い。「こんなに丁寧に教えてもらえるとは思わなかった。楽しい」との声も聞かれる。名古屋から通う生徒は1日で複数のコマを予約して学んでいる。
経験の有無は不問。〝未経験〟だけで断っていたらいつまで経っても技術者不足が解消されないからだ。客である生徒の扱いや技術の言語化に当初は戸惑っていた職人たちも、経営が楽ではない会社のためと協力してくれるようになった。河内社長は「しっかり育て、縫製技術職の価値を高めたい」と話す。