■ゲーリーとビュランのカレイドスコープ
ブローニュの森を漂いながら旅をしているアイスバーグのような、今にも変化しそうな生き物にも見える、あのフランク・ゲーリーが手がけたフォンダシオンルイ・ヴィトンが、今、ファンタスティックだ。
世界的なフランス人アーティスト、ダニエル・ビュラン(1938ー)のインスタレーション 、” L’Observatoir de la lumière / Obsevatory of Light work in situ ” 。
ビュランのインスタレーション © DB-ADAGP Paris Fondation Louis Vuitton Photo: Iwan Baan
同フォンダシオンの建物を覆うガラスで構成された12枚の「帆」を、13色のフィルターでカラフルな市松模様(チェックと言うより、日本語の方がなんとなくあてはまる)にし、空中に広がるカレイドスコープのように変化させた。
フィルターを貼ったガラスは面積にして13600平方メートル。ビュランは、80年代に大論争を巻き起こしたパレ・ロワイヤルの ” Colonnes de Buren / ビュランの円柱 ” に見るように、ストライプのインスタレーションで知られる。
建築空間を使い作品を制作してきているが、フォンダシオンLVでのインスタレーションは強烈なスケールで、一目見ただけで、突然、現実がどこかに飛ばされてしまい、「光の国のアリス」に招待されたかのようだ。
内側からの眺め © DB-ADAGP Paris Fondation Louis Vuitton Photo: Iwan Baan
「自分の仕事は” in situ ” (イン・サイチュ/ラテン語で、「本来の環境」の意)にある」、とビュランのあるインタヴューで読んだことを思い出す。このインスタレーションは、同フォンダシオンのオープニング3か月前に、ゲーリーから依頼され、ビュランは、「帆」のガラスにダイレクトにできるなら、即答したそうだ。
そしてこの建物が環境にとけこみ、大衆の目になじむまで時間を置き、今年5月にインスタレーションのオペレーションがスタートした。
” L’Observatoir de la lumière / Obsevatory of Light ” は、同フォンダシオンの外観、そして内観でも、その瞬間瞬間に自然が与えてくれる光によって、多彩なカレイドスコープを楽しませてくれる。
カレイドスコープの隙間から見えるデファンス地区
■フォンダシオンルイ・ヴィトンと中国人アーティストたち
Huang Yong Ping ” L’Arc de Saint-Gilles, 2015 © ADAGP, Paris, 2016 – Courtesy de l’artiste et de la galerie Kamel Mennour, Paris. Photo : Fabrice Seixas
カレイドスコープのようなビュランのインスタレーションの帆の中で、同フォンダシオンの所蔵コレクションから11人の中国人現代アーティストの作品が展示されている(8月29日まで)。
初めの展示室の、アイ・ウェイウェイの ” TREE ” 、ホワン・ヨンピンの作品群、ジャン・ホァンの釈迦の頭には、その作品の大きさに圧巻されながら、それを制作したアーティストを生んだ中国の力強さに飲み込まれそうな気分になる。
インフォメーション
8, Avenue du Mahatma Gandhi
Bois de Boulogne 75116 Paris
火曜日閉館
MONUMENTA 2016 Huang Yong Ping 作品の持つ怖さは、エイリアンのようだ(と勝手に思った)
ところで、今年1月にパリ左岸の百貨店ル・ボン・マルシェのショーウィンドーと本館吹き抜けで開催されたアイ・ウィエウェイのフランス初の展覧会は、百貨店(といっても店舗の規模が日本のように「大型」ではない)を美術館に変えてしまい、モノを買いに来た人と作品を見に来た人で(どちらも兼ねた人もいる)連日ごった返しのまま、会期延長に踏み切るほどの大成功を収めた。
そしてフォンダシオンLVでの中国現代アート展。「中国の波が来る」、と予感を一気に驚嘆に変えてしまう凄いのが、グランパレで今月18日まで開催中の ” MONUMENTA ” モニュメンタ。
会場グランパレの主?
2007年から毎年この時期に開催される同展のために、世界的アーティストが途方もない巨大なインスタレーションを制作。
2016年は、フォンダシオンLVでも展示されているアーティスト、ホワン・ヨンピンの、コンテナに巻き付く骨ドラゴンとでも表現したらよいのか、兎に角タイトルは ” EMPIRES “
コンテナと骨がジェットコースターのように入り乱れる
インフォメーション
Grand Palais, Nef
火曜日閉館
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。